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    レポート
    染付 ― 世界に花咲く青のうつわ
    出光美術館 | 東京都
    時代を超えて、地域を超えて
    白地に藍青色で文様が描かれたやきもの、染付(そめつけ)。17世紀に日本に伝わり、現在も普段づかいのうつわで使われるなど、広く愛されている技法です。出光コレクションの染付を一堂に集め、さまざまな角度からその魅力を紹介する展覧会が、出光美術館で開催中です。
    (左から)《白描フラスコ》キプロス 紀元前8-7世紀 / 《青釉縞文扁壺》イラン 12世紀 / 《青花アラベスク文扁壺》景徳鎮官窯 明・永楽時代 すべて出光美術館
    (左から)《多彩刻線聖獣文皿》イラン 12世紀 / 《色絵騎馬人物文鉢》イラン 13世紀 ともに出光美術館
    (左から)《瑠璃釉白抜梅鴬文皿》景徳鎮窯 明時代末期 / 《古染付梅鴬文皿》景徳鎮窯 明時代末期 ともに出光美術館
    (左から)《青花貼花文壺(手焙)》ベトナム 16-17世紀 / 《青花鴛鴦形水注》ベトナム 15-16世紀 ともに出光美術館
    《染付草花文樽瓶》肥前窯 江戸時代前期 出光美術館
    (左から)《彩磁六方香爐》板谷波山 昭和時代前期 / 《彩磁唐草文水差》板谷波山 昭和21年(1946) ともに出光美術館
    (左手前)《豆彩牡丹唐草文柑子口瓶》景徳鎮官窯 「大清乾隆年製」銘 / (右奥)《青花臙脂紅龍文瓶》景徳鎮官窯 「大清乾隆年製」銘 ともに出光美術館
    (左から)《青磁染付秋草文皿》鍋島藩窯 江戸時代中期 / 《青磁染付宝尽文大皿》鍋島藩窯 江戸時代中期 ともに出光美術館
    (左から)《白地藍彩観音像》オランダ・デルフト窯 18世紀 / 《染付観音像》肥前窯 江戸時代中期 ともに出光美術館

    染付のルーツは中国ですが、展覧会は1世紀の東地中海のうつわから。藍色と白色ガラスによるマーブル模様、青色ガラスで作られた香油瓶など、青はオリエントで広く愛された色です。


    中国では染付を「青花」と呼びます。宮廷用の窯、官窯があった景徳鎮で、元・明・清時代に最高峰の青花磁器が作られました。不思議な形の燭台《青花牡丹唐草文八角燭台》は、イスラム圏の金属製燭台がモデル。西アジア向けの輸出品が作られていた事がわかります。


    景徳鎮の青花磁器には、興味深い作例も。《青花瓜文鉢》には色の滲みがみられますが、実はわざと滲んだように描いています。技術的に滲みが避けられなかった明時代の文様を、あえて清時代に再現する事で、歴史を受け継いでいる事を示しています。



    中国の影響を受け、朝鮮やベトナムでも青花が生まれました。ただその表現は、原料(土やコバルト顔料)、風土、文化の違いにより、中国の青花とは違いが見られます。


    日本の染付といえば、伊万里。江戸時代には浮世絵に描かれるなど庶民にも広まり、さまざまなかたちの染付がつくられました。《染付草花文樽形瓶》は、木製の樽のかたちを細部まで写しています。


    染付の中には、青一色ではないものもあります。染付の青に濃緑と紅を加えた、鍋島藩窯の《色絵更紗文皿》は遠くで見ると、実際には使われていない紫色が浮かんでくるよう。まるでスーラの絵画のようです。


    日本や中国で作られた染付は欧州へ輸出され、それらを写したうつわが現地でつくられるなど、欧州の陶磁器文化にも強い影響を与えています。


    輸出向けの青花磁器の中には、奇妙な図柄も。《青花西洋人物文筒形花瓶》には、蝙蝠(こうもり)が描かれています。中国では吉祥の文様ですが、西洋では忌み嫌われている事を知らなかったのでしょうか。


    会場の最後には、5点の皿が並びます。シリアが2点、イランが2点、そしてドイツの皿。時代も材質も異なりますが、同心円状の文様、青で描かれた植物と、共通性があります。現在は政治的・宗教的に分断されている地域ですが、同じようなうつわを愛している歴史があるのです。


    展覧会の後には、美術館奥の「陶片室」の見学もお忘れなく。日本各地・アジア諸地域の古陶磁片が展示されている陶片室には、もちろん染付の陶片もあります。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年1月30日 ]


    日経おとなのOFF 2019年 1月号日経おとなのOFF 2019年 1月号

    日本経済新聞社(編)

    日経BP社
    ¥ 820

    会場
    会期
    2019年1月12日(土)~3月24日(日)
    会期終了
    開館時間
    午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
    休館日
    月曜日(ただし、1月14日、2月11日は開館)
    住所
    東京都千代田区丸の内3-1-1帝劇ビル9F
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://idemitsu-museum.or.jp/
    料金
    一般 1,000円 / 高・大生 700円 / 中学生以下 無料(ただし、保護者の同伴が必要)

    ※団体20名以上は各200円引
    ※障害者手帳をお持ちの方は200円引、その介護者1名は無料
    展覧会詳細 染付 ― 世界に花咲く青のうつわ 詳細情報
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