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    レポート
    縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展
    横須賀美術館 | 神奈川県
    美術の「スケール」を考えてみよう
    科学の発達によって、肉眼では認識できなかった物質も容易に見られるようになった現代。一方で、メディアで伝えられる事象を、実際の大きさとして体感する事も難しくなりつつあります。「スケール」をテーマにしたユニークな展覧会が、横須賀美術館で開催中です。
    平町公《京浜工業地帯の掟磯子・横須賀隆起図》(一部)2019年 作家蔵
    鈴木康広《日本列島のベンチ》2014年 作家蔵
    (手前 掛け軸2点)国友一貫斎《太陽黒点観測図(天保7年8月15日)》1836年 / 国友一貫斎《月面観測図(9日月)》1836年 / (右奥)国友一貫斎《反射望遠鏡 銘一貫斎眠龍能当(花押)》1836年 いずれも、国友正周、長浜城歴史博物館蔵
    田中達也さんのミニチュア展示風景
    田中達也《カミドメドンの発掘現場》2018年 作家蔵
    鈴木康広《水平線を描く鉛筆》ほか展示風景
    高橋勝美《職業「バス整備士」》2015年 作家蔵
    (右手前)岩崎貴宏《リフレクション・モデル(サスケハナ)》2019年 / (右奥)岩崎貴宏《フェノタイピック・リモデリング(広島)・オン・ザ・フロア》2019年 / (奥)《フェノタイピック・リモデリング(横須賀)・イン・ザ・フレーム》2019年 いずれも、作家蔵
    (右手前から)高田安規子・政子《とっておきの戦略》2019年 / 高田安規子・政子《大海の一滴》2019年 いずれも、作家蔵
    「スケールの大きな話だ」や、「スケールの小さい人だ」など、「スケール」という言葉は、日常生活でもよく耳にします。

    スケールはラテン語でScalaに由来し、もとは階段や梯子という意味でした。日本では、規模や度合いのほか、地図の縮尺、測量道具、基準など、いくつかの意味で使われます。

    スケールをテーマにした本展は、歴史的な作品・資料を通じて物の大きさと見え方を考察するとともに、写真家やミニチュア作家など8組の現代アーティストの作品も紹介。美術館で「スケール」に真っ向から挑む、ちょっと変わった試みです。

    国友一貫斎は、江戸時代の鉄砲鍛冶師です。戦国時代から続く国友鉄砲鍛冶の家に生まれ、その技術を利用して《反射望遠鏡 銘一貫斎眠龍能当(花押)》を作り、日本で初めて天体観測を行いました。

    一貫斎の望遠鏡は、最初は舶来品の模倣でしたが、最終的にはオランダ製の2倍の倍率を持つまでに。太陽や月の観測も行っています。



    8組のアーティストは、特に気になった作家を中心にご紹介します。

    地元・横須賀の作家、平町公さんの《京浜工業地帯の掟磯子・横須賀隆起図》は、416×3086cmと、会場の壁を覆う巨大な作品。本展に向けて作製された新作です。まるで空から旅をしているような臨場感を味わうことができます。

    ミニチュア用の人形と、事務用品や食品サンプルなどを組み合わせて、見立ての世界を作り出す、ミニチュア写真家の田中達也さん。女性用の髪留めや櫛などを恐竜に見立てた《カミドメドンの発掘現場》など、ユニークな作品が紹介されています。

    田中さんは、作品においてスケールは注意深く利用され、基準となる人形の大きさを使い分けられています。各作品、人形の大きさにも注目してみてください。

    高田安規子さん・政子さんは、「ガリヴァー旅行記」にちなんだ展示構成。作品をよく見ると、弓矢は爪楊枝、バケツは指ぬきなど。「ガリヴァー旅行記」の小人たちにとっては、爪楊枝などは武器だったかもと、物の見え方を再考するきっかけを紹介します。

    ちなみに「ガリヴァー旅行記」で、唯一実在する国として描かれている日本の「ザモスキ(Xamoschi)」という地名は、横須賀美術館の所在地・観音崎では? という説もあります。

    スケールについて、改めて考えさせられる本展。美術館の出入り口から、横須賀の広い海が見えます。取材後に大きな海を身ながら、人間って小さいな、と思いながら館を後にしました。

    [ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2019年4月18日 ]

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    昭文社 旅行ガイドブック 編集部 (編集)

    昭文社
    ¥ 844

     
    会場
    会期
    2019年4月13日(土)~6月23日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00 
    駐車場 8:00~22:00
    休館日
    5月13日(月)、6月3日(月)
    住所
    神奈川県横須賀市鴨居4丁目1番地
    電話 046-845-1211
    公式サイト http://www.yokosuka-moa.jp/
    料金
    一般 900(720)円 / 高大生・65歳以上 700(560)円 / 中学生以下 無料

    ※( )内は20名以上の団体料金
    ※高校生(市内在住または在学に限る)は無料
    ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付添1名は無料
    展覧会詳細 縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展 詳細情報
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