研究対象は何千万年も前の事ですが、未だ解明されていない事も多い恐竜学の世界。ひとつの発見が従来の常識を変える事も多く、まさに日々進化を遂げている学問分野です。
本展は、恐竜学50年の歩みを振り返りながら、最新の研究に基づく恐竜の世界を紹介するもの。会場冒頭のデイノニクスが、「恐竜ルネサンス」とされる新しい恐竜観を生み出した化石です。
デイノニクスは「恐ろしいツメ」という意味です。後ろ足の大きなかぎ爪を武器に、集団で大型の草食恐竜を襲っていたと推察されます。
捕食のために素早く動く能力とともに、スタミナも必要。そこで、爬虫類と同じ変温動物ではなく、鳥類のような恒温動物であったとされるようになりました。小型肉食恐竜の一部が鳥類へと進化したという説は、現在は広く支持されています。
展示されているのは、デイノニクスの‘ホロタイプ標本’。新しく発見された生物に学名をつけるときの元になる標本で、世界に1つしかない貴重な資料が初来日しました。
二足で直立し、ひときわ目を引くのがディノサウロイド。恐竜が絶滅せずに進化を続けていたら、という仮説のもとに考えられた、人間のような恐竜です。露骨な擬人観は1982年の発表当時から否定されがちですが、少なくとも化石の特徴から連想していく考え方は、間違っていません。
展覧会の目玉といえるのが、2.4メートルの長い腕を持つデイノケイルス。1965年にゴビ砂漠で見つかったものの、他の部分が見つからなかったため、謎の恐竜とされてきました。
2000年代になって見つかった化石から、徐々にその姿が明らかに。さまざまな恐竜の特徴をあわせもつ、想定外の恐竜であることが分かって来ました。
頭部は盗掘の末にヨーロッパに密輸されていましたが、研究者の努力もあってモンゴルに返還。本展ではデイノケイルスの全身骨格が、世界で初めて復元されています。
日本でも近年、恐竜の化石が相次いで見つかっています。本展では、北海道で発見されたハドロサウルス類恐竜、通称「むかわ竜」の全身復元骨格が登場。地元のむかわ町以外で展示されるのは、これが初めてです。
日本は中生代には、大陸の一部でした。むかわ竜も海だった地層から見つかったため、当初は海で生息した首長竜(学術的には恐竜ではありません)と誤認されていました。
その後、長い年月を経た末に、恐竜の化石と判明。続く発掘調査で全体の約8割の骨が見つかるという、日本の恐竜研究史に残る大発見となりました。
会場には他にも貴重な資料がずらり。夏休みの展覧会では定番といえる恐竜展で、子どもたちの人気も集めそうです。各所にある「ここに注目!」というコラム的な解説は、「恐竜の色はわかるのか?」「翼は何のため?」など、取っつきやすいテーマ。自由研究にもピッタリです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年7月12日 ]