着物の生地に文様を染めるための版である「型紙」。現在でも主に三重県鈴鹿市で生産され、「伊勢型紙」ともいわれています。
極細の彫刻刀のような道具で手作業で紙に穴を開けていく技は、実に精密。1000年以上の歴史を持つ伝統工芸です。
型紙の世界 日本における型紙の歴史とその展開19世紀後半の欧米において大ブームとなったジャポニスム。浮世絵がモネやゴッホに大きな影響を与えたことは良く知られていますが、型紙もまた、当時の芸術に大きな影響を与えていたのです。
「もうひとつのジャポニスム」ともいえる型紙は、今でも世界各国の美術館・博物館に数多く収蔵されています。
型紙とアーツ・アンド・クラフツ 英米圏における型紙受容の諸展開展覧会は5章構成です。冒頭は、日本における本来の型紙について紹介。その後に英米圏のアーツ・アンド・クラフツ、仏語圏のアール・ヌーヴォー、独語圏のユーゲントシュティールで受けいれられてきた型紙のさまざまな展開を俯瞰します。最終章は現代デザインにも受け継がれる型紙の影響を紹介していきます。
型紙とアール・ヌーヴォー 仏語圏における型紙受容の諸展開「布を染めるための型」という発想から抜け出た型紙のデザインは、実に多様な使われ方をしています。
家具やガラス工芸・食器などの模様として、ポスターのデザインとして、もちろんテキスタイルの柄としても使われています。
会場では発想の元になった型紙と、型紙のテイストが含まれる作品を並べて展示。型紙そのもののデザインも数多くあり、その強い影響力が感じとれます。
型紙とユーゲントシュティール 独語圏における型紙受容の諸展開わが国に古くからある型紙の文様を使った、装飾性あふれる作品の数々。「こんなところにも型紙の影響が!」という驚きにあふれた展覧会です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年4月5日 ]