三井記念美術館での北斎展は、本来は昨年開催されることになっていましたが、震災の影響で残念ながら中止に。丸一年を経て、満を持しての開催となりました。
展示室7アジア美術の所蔵で世界的に知られる、ホノルル美術館。収蔵している浮世絵版画は、約10,000点にも及びます。
歌川広重の名品は有名で、里帰り展も何度か開催されていますが、北斎のコレクションはあまり知られていませんでした。
今回はホノルル美術館が所蔵する北斎の逸品を網羅した、初めての北斎展となります。
展示室4の「冨嶽三十六景」展覧会の構成は《名作にみる70年の軌跡》と《輝ける晩年期の揃物》。展示ゾーンとしては揃物(そろいもの)が先になります。
揃物はお馴染みの「冨嶽三十六景」をはじめ「諸国名橋奇覧」「諸国瀧廻り」など6種。北斎は晩年まで精力的に創作を続けたことで知られていますが、紹介されている揃物はすべて数えで70歳を過ぎてから手がけたものばかりです。
展示室7の「北斎漫画」《名作にみる70年の軌跡》では、20代半ばの時の作品「富士見西行図」(後期展示)は、初公開となる逸品。最後の版画作品とされる「地方測量之図」(前期展示)は、測量しているラインがキラ(雲母)で描かれているという珍しい作品で、目を凝らして見るとラインがうっすらと分かりました。
欧米で「ホクサイ スケッチブック」と呼ばれる北斎漫画も、前後期に分けて五編づつ展示されます。
展示室1・2の「冨嶽三十六景」北斎の版画で使われている象徴的な青色(プルシアンブルー)は、幕末の浮世絵界で大ブームとなりました。三井記念美術館の重厚な展示室1で見ると、その強い彩度がより引き立って見えます。
2012年5月13日(日)までの前期と、5月15日(火)からの後期で、作品が大幅に入れ替わります。お目当ての作品をお見逃しないように。(取材:2012年4月13日)