狩野正信に端を発する御用絵師集団、狩野派。江戸時代には大きな勢力を誇りましたが、もちろん狩野派に属さない名画家も数多くいます。
板橋区立美術館といえば江戸狩野派のコレクションで知られていますが、実は狩野派ではない江戸絵画も多数所蔵しています。本展は所蔵品展として「狩野派以外」をクローズアップした、珍しい企画です。
第一展示室現在、私たちが目にする江戸絵画は作品にタイトルがついていますが、そもそも江戸時代には、作品に絵師が題名をつけることは稀でした。作品タイトルは、明治時代に美術館が整備されたことにともない、絵を管理するためにつけられたものなのです。
「それならタイトルは自分たちで付けてもいいじゃないか!」と、
板橋区立美術館では学芸員が所蔵作品に「新タイトル」をつけています。キャプションに並ぶのは「ダンシングホテイ」「ギョロリ!」「雪道はつらいぜ」などなど…。絵の見所もわかりやすく、題名を見ながら鑑賞すると楽しみ方は何倍にも広がります。
≪雪村 布袋図/啓孫 達磨図/伝宇喜多秀家 鷹図/住吉廣守 佐野渡図≫華やかな住吉派の屏風は、新タイトル「春も秋も花見で宴会」。今回は見られませんが、裏面は花鳥図です。鮮やかに細かく描かれた美しい屏風は、極上の嫁入り道具でした。
≪住吉廣尚・廣隆 春秋遊楽図屏風≫注目は柴田是真の作品。近年注目が高まっている柴田是真ですが、すでに30年前にその名を冠した展覧会を開催したのが、他ならぬ
板橋区立美術館でした。その是真にいち早く注目した
板橋区立美術館館長の安村敏信さんが、3月いっぱいで退任。任期最後の展覧会となる今回は掛け軸のほか和紙に描かれた漆絵、扇子など、見ごたえのある作品がそろっています。
第2展示室では柴田是真の作品が並びます今回はすべて
板橋区立美術館所蔵の作品ということもあり、館内は撮影フリー。入り口付近には江戸絵画のQ&Aも掲示されており、江戸絵画入門としても絶好の展覧会といえます。ぜひカメラを持ってお出かけください。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2013年2月27日 ]