山種美術館が広尾に移転してから二度目となる「百花繚乱」展。「人と花」「花のユートピア」「四季折々の花」の3構成で、江戸絵画から平成の作品まで、約60点が出展されています。
会場狩野常信の《明皇花陣図》は、唐の玄宗皇帝と楊貴妃の古事を描いた作品。花がついた枝で宮女がチャンバラをするように戦わせて遊んでいます。
狩野探幽の次の世代にあたる常信。多作の作家で必ずしも名品揃いではないそうですが、こちらは渾身の一作です。
狩野常信《明皇花陣図》「花のユートピア」には、展覧会メインビジュアルの荒木十畝(あらきじっぽ)の《四季花鳥》が。こちらは大正6年の作品です。
大画面の4幅対に、春夏秋冬それぞれの花鳥が描かれたゴージャスな作品。描かれているものについて、学芸課長の櫛淵豊子さんに調べていただきました。
四季花鳥のうち 春(華陰鳥語)
花・樹木:ハクモクレン(白木蓮)、ツバキ(椿)、レンギョウ、スミレ
鳥:シジュウカラ、イカル、ハッカン(白鷴 オス・メス)
四季花鳥のうち 夏(玉樹芳艸)
花・樹木:キリ(桐)、タチアオイ(立葵)、ヒメユリ(姫百合)
鳥:オナガ、キビタキ
四季花鳥のうち 秋(林梢文錦)
花・樹木:クヌギ、カエデ(楓)、リンドウ
鳥:アカゲラ(メス)、ヤマシギ
四季花鳥のうち 冬(山澗雪霽)
花・樹木:ウメ(梅)、マンリョウ(万両)
鳥:スズメ(雀)、サンコウチョウ(オス・メス)、オシドリ(鴛鴦 オス・メス)
荒木十畝《四季花鳥》山種美術館の看板のひとつ速水御舟《名樹散椿》は、展示室2で紹介。昭和4年に描かれた作品で、昭和52年に重要文化財に指定。昭和期の作品で重文に指定されたはじめての作品です。
白・紅・桃色・紅白絞りとさまざまな色の花が、山茶花のようにひとひらずつ散る「五色八重散り椿」を描いたもの。京都の昆陽山地蔵院(俗称椿寺)で御舟が写生した時にはありましたが、残念ながら枯れてしまい、今は同所に2代目の木が残っています。
速水御舟《名樹散椿》なお、山種美術館は2013年4月6日からGoogle Art Projectにも参加。58作品が高画質で閲覧できるようになりました。展覧会とあわせて、お楽しみください。(取材:2013年4月8日)