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    レポート
    北斎と暁斎 ─ 奇想の漫画
    太田記念美術館 | 東京都
    漫画で比べる、二人の天才絵師
    葛飾北斎と河鍋暁斎(かわなべきょうさい)。直接の関係は希薄と思われていた二人の作品を比較した展覧会が、太田記念美術館で開催中です。
    河鍋暁斎《暁斎楽画 第二号 榊原健吉山中遊行之図》
    1階には肉筆画が。左が葛飾北斎、右が河鍋暁斎
    河鍋暁斎《風流蛙大合戦之図》
    土井光華編・河鍋暁斎画《近世女大学》 明治の女子向けの教訓書。暁斎は多様な分野で活躍しました
    河鍋暁斎《今昔未見 舶来虎真図》
    葛飾北斎《忠義水滸伝画本》
    河鍋暁斎《暁斎百鬼画談》
    河鍋暁斎《暁斎漫画》 骸骨は暁斎が好きなモチーフのひとつ
    河鍋暁斎《「暁斎画談 内篇」巻之上》 裸体を描いた後に、朱色で服を着せています
    北斎は1760年生まれで1894年没、暁斎は1831年生まれで1889年没と、両者の年齢差は71歳。北斎は数えで90歳まで生きた「画狂老人」だったため、二人の生涯は重なる部分はあるものの、両者の直接の関係を示す資料は見つかっていません。

    ただ、日本の浮世絵がヨーロッパにもたらされた19世紀末に、熱狂的なジャポニスム・ブームの中で「暁斎は北斎の弟子」の伝えられたことがありました。

    それは事実ではないのですが、ヨーロッパの人にとって、二人の作品には類似する印象があったのかも知れません。本展では今まで比較されることが少なかった二人を、特に「漫画」に着目して構成した企画です。


    展覧会ではテーマ別に両者を比較して紹介。こちらは「動物」の比較です。

    北斎の作品では「富嶽三十六景」に次ぐ知名度がある「北斎漫画」。欧米でも早くからホクサイ・スケッチとして知られ、ユーモラスでリズミカルな動きの人々が数多く描かれています。

    北斎漫画は全部で15編が刊行された人気シリーズですが、実は最後の第十五編が刊行されたのは明治11(1878)年と、北斎が没した29年後。それほど高い人気があったのです。


    葛飾北斎《北斎漫画》

    暁斎も絵本を書いており、最後の「北斎漫画」が刊行されてから3年後の明治14(1888)年に、「暁斎画譜」「暁斎楽画」「暁斎鈍画」「暁斎略画」そして「暁斎漫画」などが刊行されています。

    とうの昔に亡くなった絵師の絵本が出るぐらいなら、俺だって…と思ったかどうかは定かではありませんが、暁斎も人々の営みやポーズを取る骸骨などを、巧みに描きました。


    骸骨はカエルと並んで、暁斎が好んだモチーフ。例の人気海賊漫画の音楽家のモデルはこれ?

    個人的に目をひいたのが、「躍動する身体」の章で展示されていた河鍋暁斎の《「暁斎画談 内篇」巻之上》。「河鍋暁斎筆 着服図法」と書かれたスケッチで、墨で裸体を描き、その上に朱色で服を着せています。

    このような描き方は、同じ太田記念美術館で開催された「没後120年記念 月岡芳年」展でも紹介されていました。ちなみに月岡芳年も河鍋暁斎も、同じ歌川国芳門下です。


    河鍋暁斎《「暁斎画談 内篇」巻之上》

    肉筆画に多くの秀作を残していることもあり、漫画はあまり紹介されていなかった河鍋暁斎。ユニークな一面と同時に、その正確な描写力も改めて堪能できる展覧会です。

    河鍋暁斎の関連展としては、三井記念美術館で「河鍋暁斎の能・狂言画」(4月20日~6月16日)、国立能楽堂資料展示室で「世も盡きじ―三井家の能・暁斎の猩々―」(4月19日~6月13日)も開催中です。(取材:2013年4月26日)

    反骨の画家 河鍋暁斎

    狩野 博幸 (著), 河鍋 楠美 (著)

    新潮社
    ¥ 1,575

     
    会場
    会期
    2013年4月27日(土)~6月26日(水)
    会期終了
    開館時間
    10:30~17:30(入館17:00まで)
    休館日
    毎週月曜日(4月29日、5月6日は開館、4月30日と5月7日は休館) 5月27日~5月30日(展示替えのため)
    住所
    東京都渋谷区神宮前1-10-10
    電話 03-5777-8600
    公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
    料金
    一般 1,000円/大・高生 700円/中学生以下 無料
    ※10名以上の団体は1名あたり100円引き
    展覧会詳細 北斎と暁斎 ─ 奇想の漫画 詳細情報
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