1889(明治22)年に銀座木挽町で誕生した歌舞伎座。これまでに火災や空襲で何度も危機を迎えましたが、そのたびに力強く復興してきました。
再開場で第五期となった歌舞伎座。120年余に及ぶ長い歩みの中でも、歌舞伎の世界を紹介する施設の開設は今回が初めてとなります。
記念すべきオープニングは「歌舞伎の美 春」。歌舞伎の大道具のひとつである「桜の吊り枝」で彩られた、華やかな企画展です。
展示スペースでは、桜が使われている舞台のダイジェスト映像なども楽しめます奥に併設されているイベントスペース「木挽町ホール」には、歌舞伎の効果音を体験できるコーナーがあります。
ビーズを糸で縫いつけた団扇を振ると雨音が聞こえる「雨団扇」、貝をすり合わせて表現する蛙の鳴き声、棒状の木を動かすと和船の艪(ろ)の音に…。ユニークな展示品は、すべて実際に舞台で使用されている楽器です。
「雨団扇」を振ると、このとおり舞台には、歌舞伎舞踊のなかでも最も有名な作品のひとつ「京鹿子娘道成寺」の主人公、白拍子花子の衣裳が並びます。
次々に変わっていく衣裳は「京鹿子娘道成寺」の見どころのひとつ。実はすべての衣裳に桜の文様が描かれています。
艶やかな白拍子花子の衣裳出口付近で紹介されているのは、公演筋書(パンフレット)をコラージュしたタペストリー。第四期歌舞伎座の開場式が行われた1951(昭和26)年から、閉場した2010(平成22)年までの公演筋書で、四月興行のものを展示しました。桜、菜の花、紋白蝶(モンシロチョウ)など、春らしいモチーフが鮮やかです。
公演筋書(パンフレット)歌舞伎座ギャラリーは、歌舞伎座の公演がない日でも会期中は無休。エントランス正面の回遊式「屋上庭園」とともに、銀座の楽しみがまたひとつ増えました。
今後は7月中旬~9月上旬、9月中旬~11月下旬、12月中旬~3月中旬に企画展が開催される予定です。(取材:2013年5月9日)