はじめての日本美術展は、川崎・砂子の里資料館館長の斎藤文夫氏が所蔵する浮世絵と、
三菱一号館美術館が所蔵する西洋版画を併せて紹介する企画。県議会議員や参議院議員として長く活躍した斎藤文夫氏によるコレクションで、これまでも国内外で公開され、高い評価を得ています。
会場冒頭本展は3期の構成。全作品が入れ替わります。
第1期(6月22日~7月15日)は「浮世絵の黄金期 ─ 江戸のグラビア」と称して、美人画や役者絵など。第2期(7月17日~8月11日)は「北斎・広重の登場 ─ ツーリズムの発展」で、《冨嶽三十六景》《東海道五拾参次之内》などを展示。第3期(8月13日~9月8日)は「うつりゆく江戸から東京 ─ ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線」として、幕末から明治にかけての浮世絵をご紹介します。
鈴木春信、喜多川歌麿ら、名品がずらり三菱一号館美術館といえば、小さな展示室を回っていく空間構成が特徴です。あの空間の中で浮世絵がどのように見えるのか、と興味津々でしたが、なかなかの雰囲気。
特に、肉筆浮世絵が林立する3階の一番大きな展示室は見応え充分。絵の間を抜けるように進んでいきます。
肉筆浮世絵が林立もちろん、三菱一号館美術館での展示ですので、単に浮世絵を並べるだけではありません。
ジャポニスムの代表選手として、西洋美術に大きな影響を与えた浮世絵。同館が所蔵するロートレックなど、浮世絵から影響を受けたヨーロッパ近代版画を浮世絵とともに展示しています。
同じ空間で見せることで、時代や地域を越えた浮世絵の普遍的な魅力を感じてもらおう、という意図です。
浮世絵とヨーロッパ近代版画が、同じ空間で「浮世絵展の開催なので、近くの出光美術館や三井記念美術館での開催と間違えられないように、ポスターには館のシルエットと館名を大きくいれました」と、展覧会担当の野口玲一学芸員と冗談めかして笑いますが、思った以上に魅力的な異文化交流展。ミュージアムショップに和ものグッズが並ぶのも新鮮でした。ぜひ3期とも足をお運びください。もちろん、会場をお間違えないように。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年6月21日 ]