わが国の水墨画を語る上で欠かせないのが、禅宗の役割。当時は日中間で僧侶や文物の往来が盛んに行われており、水墨画も禅宗と結びつきながら普及していきました。
展覧会は、展示室1で「水墨の観音図」「詩画軸と周文」「関東水墨画」「拙宗等揚とその系譜」「水墨の花と鳥」、展示室2では「大徳寺と曽我派、小栗派」「初期狩野派」という構成です。
展示室1芸阿弥(げいあみ)による重要文化財《観瀑図》(動画の右側)は、
根津美術館 の室町水墨画を代表する一点。芸阿弥は足利将軍家に仕えた同朋衆ですが史料や画跡などは少なく、本作品は唯一現存する貴重な水墨画です。
作品は弟子である建長寺の画僧・賢江祥啓(けんこうしょうけい)に与えられたものですが、会場ではその祥啓による重要文化財《山水図》も並べて展示。右から三角形状に突き出た岩山など、師の画風を学んでいることがよく分かります。
芸阿弥が描いた《観瀑図》と、弟子の賢江祥啓による《山水図》牡丹の花の下で猫が飛んでいる蝶をみつめているのは、蔵三(ぞうさん)による《牡丹猫図》。根津美術館のミュージアムショップで特に人気がある一点です。墨のぼかしと細かい描線で、猫の毛並みを丁寧に描写しています。
現在は掛け軸になっていますが、少し変わったプロポーションなので、元は衝立に貼られていた可能性もあります。
《牡丹猫図》蔵三筆同時に開催されているテーマ展。展示室5では「刀装具の花鳥風月」と題し、コレクションの中から拵(こしらえ)や小道具を紹介しています。
花鳥風月や文学、宗教的な逸話などで日本刀を装飾。精緻な細工の鍔(つば)、華やかな鞘(さや)など、江戸時代~明治にかけての約40件が並びます。また、展示室6では「夜長月の茶」も開催されています。
展示室5「刀装具の花鳥風月」会期中には関連プログラムとして、講演会も実施(9/14、9/28、10/19)。詳しくは公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年9月10日 ]