世界有数の規模を誇る米国の美術館、ワシントン・ナショナル・ギャラリー。年間500万人が訪れるこの美術館は12万点の収蔵品を擁しており、特に印象派とポスト印象派の質が高いことは良く知られています。
同美術館は、米国の銀行家で財務長官だったアンドリュー・W・メロンが基金と自身のコレクションを連邦政府に寄贈したのがきっかけ。同美術館のコレクションは、寄贈者からの意向などによって、通常は限られた数しか一度に貸し出さないという不文律があり、まとまった数を館外で鑑賞することは困難でしたが、今年は同美術館は西館を大規模改修中。それにともなって、計83点を貸し出せることになったのです。
出品された83点も豪華そのもの。56点が油彩で、マネ(5点)、モネ(6点)、ルノワール(6点)、セザンヌ(6点)、ゴッホ(3点)等々。うち23点は日本初公開です。また、油彩以外の素描、水彩なども27点が出品。これらは作品保護のために同美術館内でもめったに公開されないもので、全て日本初公開となります。
第2章「印象派」。印象派の生みの親でもあるモネの4作品。
出品作の中で目玉のひとつと言えるのが、マネの「鉄道」(1837年)。この作品はマネが当時パリで最も権威ある展覧会だったサロンに出品した3点の油彩画の中で、唯一、入選を果たした作品で、パリのサン=ラザール駅が舞台。マネの作品は謎のモチーフがあることも多いのですが、この作品でも、なぜか少女の脇にぶどうが置かれています。
会場は東京・乃木坂の国立新美術館。企画展示室1Eで、絵の間を広くとって、ゆったりと鑑賞できるようになっていました。展覧会のテーマソングアンジェラ・アキさん(ジョージ・ワシントン大学卒)が歌ったり、絵画に登場する犬を「ワシントン犬(けん)」としてピンバッジにしたりと、楽しい企画も盛りだくさんです。
まさに「お宝」といえる秀作が目白押し。ワシントン・ナショナル・ギャラリーの館長も「今回の展覧会ほど充実した企画は、恐らく二度とできない」という特別展。これを見逃したら、次は飛行機のチケット予約が必要になると思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年6月7日 ]
第4章「ポスト印象派以降」