吉岡さんは1967年生まれ。桑沢デザイン研究所を卒業後、故・倉俣史朗や三宅一生さんに師事。2000年に独立して以降、斬新なアイディアから生みだされる数々の作品は、私たちを驚かせ続けてきました。

会場に入ると目に入るのは、ストローで作ったインスタレーション《Tornado》。接着剤などは用いず、単純に積み上げることだけで形にしています。

奥に進むと聴こえてくるのは、チャイコフスキーの「白鳥の湖」。吉岡さんは音楽を聴かせながら自然結晶を成長させる「クリスタライズド プロジェクト」に2007年から取り組んでいます。壁面には、音楽を聴かせながらできた結晶絵画が展示されました。

再び《Tornado》を抜けた先にあるのは、わずか７本の糸で生み出された椅子《蜘蛛の糸》。

フレームに張られたのは７本の糸。ここから結晶が育つことによって、極細の糸が椅子の形に固定されていきます。

続く《Rainbow Church》は、展覧会最大の見せ場です。2010年に韓国での展覧会で発表された作品です。

20代前半で訪れた南仏ヴァンスで、マティスが手掛けた「ロザリオ礼拝堂」の圧倒的な光と色に衝撃を受けた吉岡さん。「いつかこのような建築をつくりたい」という想いが結実したのが、この作品です。

ステンドグラスのように使っているのは、およそ500個のクリスタルプリズム。外から入る光は室内で虹色となり、鮮やかに空間を彩ります。

さらに、教会のシンボルとして考案した《Rainbow Chair》なども展示。

１階では、吉岡さんの代表作ともいえる２つの椅子《Honey-pop》《PANE chair》も紹介されています。

「自然のエネルギーを結晶化し作品を生み出す」という意味が込められた「クリスタライズ」。人の手による造形や技法を離れ、自然から生み出されるかたちを追及しました。

理屈抜きの美しさが際立つ、吉岡徳仁さんならではの世界。写真撮影が可能な作品もあるので（携帯電話カメラのみ）ネット上でも拡散していきそうです。
[ 取材・撮影・文：古川幹夫 ／ 2013年10月2日 ]