明治時代には三菱合資会社の銀行部などが入っていた三菱一号館は、1894(明治27)年に完成。一度は取り壊されましたが、残された図面を元に復元されたのが、現在の赤レンガの建物です。
復元には残っていた当時の部材を用いたほか、できる限り明治期に近い素材を調達し、2010年、美術館として蘇りました。
今回の展覧会では、同館の西洋美術コレクションの主要作品を公開。ミレー、ルノワール、モネ、トゥールーズ=ロートレックなど、錚々たる画家の作品が並びます。
会場入口から展覧会のメインビジュアルは、流れるような描線で描かれた《長い髪をした若い娘(麦藁帽子の若い娘)》。展覧会の最初のほうで登場します。
ルノワールが新しい画風を模索していた時代に描かれた作品。印象派時代とは異なり、顔や手には輪郭線が描かれているのが特徴的です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール《長い髪をした若い娘(麦藁帽子の若い娘)》1884年 三菱一号館美術館寄託開館当初からのコレクションの核が、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック。
三菱一号館美術館では2011年にロートレック展を開催しています。
三菱一号館美術館のロートレック作品は、本人が死の直前まで手元に保有し、画商かつ親友だったモーリス・ジョワイヤンに託した作品群が主体。正当性や保存状態の良さは折り紙つきです。
ロートレックの作品が並ぶ三菱一号館美術館では2014年の展覧会スケジュールも発表されています。注目は6月開催の「ヴァロットン ─ 冷たい炎の画家」展。日本での知名度は高くありませんが、鮮烈なコントラストの木版画は高い評価を得ています。
本展でもひと足早く、ヴァロットンの作品を公開。高いデザイン性はもちろん、シニカルな視点にも注目してください。
ヴァロットンの木版画そして、終章近くで
三菱一号館美術館の目玉作品のひとつ《グラン・ブーケ》が登場します。
ルドンが描いた最大のパステル画は、248.3×162.9cmという大きさ。ブルゴーニュの城館で秘蔵されて110年にわたって非公開だった作品を、2010年に
三菱一号館美術館が新収蔵しました。
零れるばかりの鮮やかな花々。すでに何度か公開されている作品ですが、何回見てもその存在感には圧倒されます。
オディロン・ルドン《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年 三菱一号館美術館蔵公式ホームページもリニューアルし、ますます元気な
三菱一号館美術館。10月11日(金)からは、新たに
三菱一号館美術館サポーター制度(MMS)もスタートします。
本人が何度でも入館できるのは珍しくありませんが、MMSは同伴者1名も無料で入館できるという驚きの内容。多くの人に
三菱一号館美術館を楽しんでもらいたいという、意欲的な太っ腹企画です。
各展覧会で1回、サポーター限定の貸し切り鑑賞会も実施。カフェのサービスもあって、年会費は10,000円。これは話題になりそうです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月3日 ]