大きく開いた碗形の井戸茶碗。「井戸」の名前は、井戸若狭守という人物が持っていたため、見込み(茶碗の内側)が井戸のように深いため、など諸説ありますが、はっきりした事は分かっていません。
16世紀後半に侘び茶が生まれると、その独特の佇まいや存在感が重用されるようになり、関白秀吉も天下一の茶碗として井戸茶碗を所持するなど、侘び茶の最高峰の茶碗として今日まで伝えられてきました。
会場入口から井戸茶碗は「大井戸」「小井戸」「青井戸」などに分類されます。
井戸茶碗の中でもとりわけ大振りで、堂々とした形の「大井戸」。大井戸と比べると口径が小さく、浅めの碗である「小井戸」。高台から口縁までほぼ直線的に開き、高台が低く、轆轤目がはっきりとした「青井戸」。
本展では国宝1点、重要文化財3点、重要美術品9点を含む井戸茶碗72点を展示(会期中一部展示替えあり)。個人蔵の作品が多いこともあり、井戸茶碗だけでこれだけの名品を揃えるのはそう容易ではありません。
会場特に大井戸茶碗は形状が似ているだけに、じっくり見ていくことで色や形の微妙な差異を見つける楽しさも。
また、独立ケースに入った茶碗は360度回って鑑賞することができるため、胴部に残る轆轤目、高台脇の梅花皮(かいらぎ:釉薬が粒状に縮れて固まったもの)まで、じっくり堪能できます。
《小井戸茶碗 銘 忘水》根津美術館蔵なお、本展と同時期に開催されている
三井記念美術館「
国宝『卯花墻』と桃山の名陶」、
五島美術館「
光悦 ─桃山の古典」で、三館合同キャンペーン「茶陶三昧三館めぐり」を実施中。
いずれかの展覧会の半券提示で、他の展覧会の入館料が割引に。さらに三展覧会全てを見ると、いづれか一館の次回展の入館券がプレゼントされます。詳しくは公式サイトなどでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年11月1日 ]