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    レポート
    芹沢銈介と柳悦孝 ―染と織のしごと―
    日本民藝館 | 東京都
    駒場で味わう、染と織
    染色作家・芹沢銈介(せりざわけいすけ)と染織作家・柳悦孝(やなぎよしたか)の二人展が日本民藝館で開催中です。都会の喧騒を忘れさせる純和風の美術館には、ゆったりとした時間が流れているようでした。
    柳悦孝による着物や帯地など。左手前は「三色手綱絣 着物」(1979年)。粋な柄です。
    柳悦孝による毛のショールやマフラー。ほっこりとした味わい。
    雑誌「工藝」の表紙(1936年)。織は柳悦孝、型染は芹沢銈介。
    柳悦孝が設計した組立椅子(1948年頃)
    芹沢銈介の「型絵染 沖縄風物」(1949年)。まだ沖縄は本土復帰前です。
    芹沢銈介の着物2点。
    吹き抜け部にあしらわれた、芹沢銈介の作品3点。中央の焼き物は、濱田庄司による大鉢。
    1階の展示室。
    日本民藝館の外観。創設者の柳宗悦は、日本統治時代の朝鮮に起こった独立運動を日本側が弾圧した際に「反抗する彼らよりも一層愚かなのは圧迫する我々である」と日本政府を批判した気骨のある人物でもありました。
    柳悦孝(1911-2003)は、日本民藝館創設者である柳宗悦(やなぎむねよし)の甥。宗悦の勧めで織物の道に進み、沖縄に渡って織物の技法を学びます。模様を自由に展開できる絣の技法である手結(てゆい)や、地元の植物染料を使って染める黄八丈(きはちじょう)など、伝統の技を謙虚に学びながら、堅牢で実用性に富んだ手織物を織りました。同時に、煮ると水に溶けるビニロン糸を使った撚(よ)りの無いマフラーなど、オリジナリティあふれる仕事もしてきました。また、創作の一方で女子美術大学などで教鞭もとり、1975年~83年には同大学の学長も勤めています。

    一方の芹沢銈介(1895-1984)は、型絵染の人間国宝(重要無形文化財保持者)。柳宗悦による著書「工藝の道」に感銘を受け、宗悦を生涯の師として仰いで交流。昭和14年に沖縄にわたって紅型(びんがた、沖縄を代表する染色技法)を学び、本来は分業作業で行なう型彫から染までを全て一人で行いました。花、鳥、風景、文字など、様々なモチーフを題材にした染め模様は高く評価され、昭和31年に「型絵染」で人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されています。

    2階の大展示室

    ふたりは日本民藝館の展示にも携わり、公募展「日本民藝館展」の審査などを通して後進の指導にもあたりました。2階の大展示室や回廊などに展示されたふたりの作品は、150点余り。柳悦孝は絹、木綿、毛などの素材を生かした着物、帯、服地、マフラーなど。芹沢銈介は型染による屏風、着物、装丁本など。雑誌「工藝」の表紙は柳が織った布に、芹沢が染めたという共同制作です。どれも素朴ながら、味わいのある作品ばかり。取材に伺ったのは平日の午前中でしたが、開館前から民芸ファンが待っているなど、静かな人気を呼んでいるようです。

    日本民藝館内

    会場の日本民藝館は、昭和11年(1936年)の開館。日本各地の日常雑器、日用品などの一般的に使う民衆的工芸=民芸の中に美を見出し、それを広めていこうとした「民芸運動」の中心的人物だった柳宗悦が、自邸の隣に創設しました。写真でご覧いただけるように、美術館は2階建瓦葺きの蔵造り風。館内には靴を脱いでスリッパに履き替え、陳列ケースは木製、採光にも紙障子が使われているなど、純和風の空間です。渋谷から2駅の駒場東大前から徒歩5分という恵まれた立地。1階にはショップもあり、様々な民芸品や書籍などを取り扱っています。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年7月8日 ]
     
    会場
    会期
    2011年7月5日(火)~9月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日(祝日の場合その翌日)、年末年始、展示替のための特別休館
    住所
    東京都目黒区駒場4-3-33
    電話 03-3467-4527
    公式サイト http://www.mingeikan.or.jp/
    展覧会詳細 芹沢銈介と柳悦孝 ―染と織のしごと― 詳細情報
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