ブリヂストン創業者である石橋正二郎のコレクションに端を発する、
ブリヂストン美術館。モネやルノワールなど充実した西洋近代美術、青木繁や藤島武二らの日本近代美術、そしてジャン・フォートリエやザオ・ウーキーなどの戦後美術といずれも高い質を誇り、東京駅近くという好立地もあって日本全国の美術ファンに愛されてきました。
本展の後、ビルの建て替えに伴う新築工事に入るため、休館は「数年間」。「いつでも名画にあえる」ことが当たり前だった
ブリヂストン美術館も、今回ばかりは見逃すわけにはいきません。
会場も、いつもと少し違う雰囲気。特に最初の展示室はまるで博物館のような趣きで、
ブリヂストン美術館の63年に及ぶ歴史をパネルと映像で紹介します。
展示室1には、石橋正二郎の肖像写真や、開館記念ポスターも。1972年には皇太子妃殿下(現皇后陛下)も来館されました出品作は約1,600点に及ぶ
ブリヂストン美術館の所蔵作品の中から厳選、さらに石橋美術館所蔵の作品も加えて、約160点がセレクトされました。まさに「ベスト」ばかりですが、ここではごく一部をご紹介したいと思います。
《草上の昼食》や《オランピア》で知られるエドゥアール・マネ。マネの自画像は2点しか知られていませんが、そのうちの1点が
ブリヂストン美術館にあります。マネは、印象派展に参加した画家たちのリーダー格。細身ながら堂々とした佇まいに、存在感の大きさが感じられます。
エドゥアール・マネ《自画像》ブリヂストン美術館の看板娘が、ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》。ショップの絵ハガキ売り上げもダントツでトップ。美術館1階の Tearoom Georgette(ティールーム ジョルジェット)も、この作品から命名されました。ルノワールが肖像画家として成功するきっかけにもなった作品です。
ブリヂストン美術館のルノワール作品としては、こちらの《少女》もお忘れなく。青い瞳の美しい少女を柔らかいタッチで描いた、パステルの作品です。
動画は順に、ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》、ピエール=オーギュスト・ルノワール《少女》石橋財団コレクションの出発点となったのが、日本の洋画。第6室と第7室で展示されています。
藤島武二《黒扇》は、重要文化財。全体的に素早いタッチで、特にベールと扇はざっくりと描写。対照的に顔は極めて的確に面を捉え、彫りの深いモデルの表情を見事に表現しています。イタリアで描いたこの女性像は、藤島もお気に入りだったようで、最晩年まで大事にアトリエに置いていました。
3月31日(火)からは、石橋美術館が所蔵する藤島武二《天平の面影》、青木繁《海の幸》、青木繁《わだつみのいろこの宮》(いずれも重要文化財)も展示されます。
藤島武二《黒扇》(重要文化財)これだけの内容にも関わらず、コレクション展ですので入館料はリーズナブル(一般 800円、シニア 600円、大高生 500円)。しかもリピーター割引で、2回目以降はチケット提示で半額となります。毎週金曜日は20時まで開館、お仕事帰りでもバッチリです(入館は30分前まで)。
大学生までの学生の方には、さらにお得な情報も。3月17日(火)~3月31日(火)は「学生 無料ウィーク」として、東京駅周辺の5つの美術館(
ブリヂストン美術館、
出光美術館、
三井記念美術館、
三菱一号館美術館、
東京ステーションギャラリー)に無料で入館できるという太っ腹企画も実施されます(
詳しくはこちら)。
報道も広がっているため、おそらく会期末はかなり混雑すると思われます。「ゆっくり見られなかった」という事がないように、早め早めの行動をおすすめします。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年1月30日 ]