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    レポート
    燕子花と紅白梅 ─ 光琳デザインの秘密 ─
    根津美術館 | 東京都
    生きているうちは最初で最後?
    尾形光琳(1658-1716)の国宝2大屏風が揃う特別展、MOA美術館での展示を経て、いよいよ東京でも始まりました。俵屋宗達や本阿弥光悦、尾形乾山などの作品もあわせ、光琳の卓越したデザイン性に迫ります。
    (左から)国宝《紅白梅図屏風》尾形光琳筆 MOA美術館蔵 / 国宝《燕子花図屏風》尾形光琳筆 根津美術館蔵
    重要文化財《蔦の細道図屏風》伝 俵屋宗達筆・烏丸光広賛 相国寺蔵
    (左から)《槇楓図屏風》伝 俵屋宗達筆 山種美術館蔵 / 重要文化財《槇楓図屏風》尾形光琳筆 東京藝術大学蔵(4/18~5/3展示)
    《扇面散貼付屏風》(右隻)俵屋宗達筆 出光美術館蔵(4/18~5/3展示)
    重要文化財《円形図案集(小西家文書)》尾形光琳筆 大阪市立美術館蔵
    重要文化財《扇面貼交手筥》尾形光琳筆 大和文華館蔵(4/18~5/10展示)
    (左から)《仙翁図香包》尾形光琳筆 / 《蔦図香包》尾形光琳筆
    (左から)重要文化財《梅花蒔絵燗鍋下絵(小西家文書)》尾形光琳筆 京都国立博物館蔵(4/18~5/3展示) / 重要文化財《梅花蒔絵箱下絵(小西家文書)》尾形光琳筆 大阪市立美術館蔵
    《水葵蒔絵螺鈿硯箱》尾形光琳作 MOA美術館蔵
    前回、両屏風が並んだのは56年前。天皇・皇后両陛下のご成婚を記念する展覧会で、会場は同じ根津美術館でした(もちろん建物が改築される前ですが)。

    待ちきれない方も多いと思います。何はともあれ、早速会場に入ってみましょう。

    両屏風は展示室に入って奥の、最も長い壁面ケースに並べて展示。今回は展示室内の独立型展示ケースを設置せず、鑑賞スペースを広く確保しているので、離れた場所から比べるように楽しむ事もできます。


    第1章「燕子花図と紅白梅図 『模様』の屏風の系譜」

    《燕子花図屏風》は、光琳が40歳代半ばの時の作品。葉や茎に比べて花が大きく、右隻の左端ではかなり低い位置で咲いているなど、現実から離れた描写もあり、画面構成に力点を置いて制作した事が良く分かります。ほぼ水平に燕子花を配した右隻に対し、左隻は極端に下の方にレイアウト。金地とのバランスも非の打ちようがありません。

    対する《紅白梅図屏風》は、光琳最晩年の作品。S字型の流水を挟んで、枝を上に伸ばして若々しい紅梅に対し、枝を下に向けて張り出した白梅は老熟を思わせて対照的です。幹や枝にはたらしこみの技法がみられる一方、花は可愛らしく単純化。硫化して茶色くなった流水は、当初は銀色に輝いていたはずで、金地との対比はより鮮やかだったと思われます。


    《燕子花図屏風》と《紅白梅図屏風》

    光琳は呉服商・雁金屋(かりがねや)の生まれ。祖父の代には大いに繁盛し、注文帳には美しい衣裳文様が多く見られます。さらに光琳の曽祖父の妻は本阿弥光悦の姉という事もあり、父や祖父は光悦流の書をよくするなど、光琳の周辺には感性を刺激するものが溢れていました。

    展示室2では雁金屋の衣裳図案帳や、雲母摺りが見られる光悦謡本などを紹介。光琳は宗達風のデザインに興味を持っていた事が伺えます。


    第2章「衣裳模様と光悦謡本 光琳を育んだ装飾芸術」

    通常の根津美術館での企画展は1階の2つの展示室で開催されますが、今回は2階の展示室5でも開催中です。

    屏風とならんで得意だったのが団扇。乾山の焼き物に絵付けをした兄弟コラボも有名です。円形の図案集は蒔絵の下絵で、おそらく杯用。さまざまなジャンルを手掛けた光琳は、まさにマルチクリエイターといえる存在でした。


    第3章「団扇・香包・蒔絵・陶器 ジャンルを超える意匠」

    2大国宝の他にも《蔦の細道図屏風》(伝 俵屋宗達筆で、屏風の左右を入れ替えても模様が繋がる不思議なデザイン)、ふたつの《槇楓図屏風》(伝 俵屋宗達筆と、それを模写&アレンジした光琳筆)など、見応えたっぷりです。

    次に両屏風が揃うのも今回と同じペースなら、生きているうちに見られるのは、たぶん私はこれが最後です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月17日 ]

    もっと知りたい尾形光琳 ─ 生涯と作品もっと知りたい尾形光琳 ─ 生涯と作品

    仲町 啓子 (著)

    東京美術
    ¥ 1,728


    ■燕子花と紅白梅 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年4月18日(土)~5月17日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし5月4日(月祝)は開館
    住所
    東京都港区南青山6-5-1
    電話 03-3400-2536
    公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
    料金
    一般 1,200円/学生 1,000円
    ※20名以上の団体は200円引き
    ※中学生以下無料
    展覧会詳細 燕子花と紅白梅 ─ 光琳デザインの秘密 ─ 詳細情報
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