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    レポート
    ボルドー展 ─ 美と陶酔の都へ ─
    国立西洋美術館 | 東京都
    残った猛獣、失われた勇者
    古代ローマ時代から行われているワイン生産と海洋貿易で栄え、パリより100年も早く都市整備が進められてきたフランス南西の港町、ボルドー。先史時代から現代までの作品・資料でその長い歴史を俯瞰する企画展が、国立西洋美術館で開催中です。
    (右)ウジェーヌ・ドラクロワ《ライオン狩り》1854-55年 175×360cm ボルドー美術館
    (左から)《イシス=フォルトゥーナの小像》ローマ時代 ボルドー考古学協会(アキテーヌ博物館へ委託) / 《聖牛アピスの小像》2世紀 ボルドー考古学協会(アキテーヌ博物館へ委託)
    (右)《ボルドー市の紋章》14世紀末-15世紀初頭 アキテーヌ博物館
    (左から)ピエール・ラクール(父)《ボルドーの港と河岸の眺め(シャルトロン河岸とバカラン河岸)》1804-06年 ボルドー美術館 / トーマス・ローレンス《ジョン・ハンターの肖像》1789-90年 ボルドー美術館
    (左から)アドルク・ウルリク・ヴェルトミュラー《花束を持ったアンリエット・ネラクの肖像》 / アドルク・ウルリク・ヴェルトミュラー《エメリー・ネラクの肖像》 いずれも1789年 ボルドー美術館
    (左から)ジャン=ピエール・グランジェ《ガニュメデス》 1812年 ボルドー美術館 / ミシェル=マルタン・ドロラン《賢明》 1823年 ボルドー美術館
    ピーテル・パウル・ルーベンス《聖ユストゥスの奇跡》1629-30年 ボルドー美術館
    ナルシス・ヴィルジール・ディアス・デ・ラ・ペーニャ《スリオットの女たち》 1830年頃 ボルドー美術館 / アドリアン・ドーザ《シナイ山の聖カタリナ修道院の協会》 1850年 ボルドー美術館
    (左から)ギヨーム・アロー《サマズイユ夫人の肖像》 1904年 ボルドー美術館 / レオン・ボナ《ダニエル・ゲスティエ氏の肖像》 1908年 ボルドー美術館
    海外の特定の市にスポットをあてた、ちょっと珍しい企画展。国立西洋美術館での会場構成も特徴的で、通常は展示室に入ると左手に進みますが、本展では右手に折れ、いきなり階下に進みます。

    まず目に入るのが《角を持つヴィーナス(ローセルのヴィーナス)》。世界的にも有名な25,000年前(旧石器時代)頃の考古資料で、今回が初来日です。

    彫り込まれているのは、右手に角を持ち、正面を向いた女性像。豊穣や多産に関係するとも考えられていますが、詳しい事は分かっていません。


    「プロローグ ── 起源」 《角を持つヴィーナス(ローセルのヴィーナス)》

    この後も1~2章は考古資料が多く、歴史系の博物館のような趣きです。

    ボルドーのワイン生産は、古代ローマ時代から。大きなアンフォラ(壺)はワインの海上輸送に用いられた容器で、早くからこの地が交易の拠点であった事が分かります。

    奥の胸像は《フランソワ・ド・スルディス枢機卿の胸像》。17世紀初頭のボルドー大司教だったスルディス枢機卿は豪奢を好んだ人物で、この像もバロック彫刻の巨匠、ジャン・ロレンツォ・ベルニーニに依頼して作らせたものです。


    1章「古代のボルドー」、2章「中世から近世のボルドー」

    上階の3章に進むと、いつもの国立西洋美術館の雰囲気に。ここでは、ガロンヌ河の流れに沿って三日月の形に発展したため「月の港」と称され、黄金時代を迎えた18世紀のボルドーが取り上げられます。

    この時代になると、今日まで続くボルドーワインの名声が確立。それ以上に海洋貿易の発展はボルドーに大きな富をもたらし、端正な古典主義・新古典主義の都市景観がつくられました。

    美しい港町の全容を描いたラクール(父)の風景画、シャルダンによる静物画らとともに、奥に進むと当時の暮らしがイメージできる陶磁器や銀器、家具なども紹介されています。


    3章「18世紀、月の港ボルドー」

    展覧会メインビジュアルのウジェーヌ・ドラクロワ《ライオン狩り》は、4章で展示されています。

    ボルドー美術館の代表的所蔵品でもあるこの作品は、1855年のパリ万博に出展するためフランス政府が注文したもの。「ライオン狩り」はこの時期のドラクロワが繰り返し取り組んでいた得意のテーマでした。

    火災で画面上部が失われてしまいましたが、それでも横360cm、縦175cmという大画面。作品横にはルドンによる模写もあり(サイズはだいぶ小さ目です)、照らし合わせてみると、無くなった部分の中央は、馬上から雄ライオンに短剣をふるう人。右側は槍で雌ライオンに狙いを定めた人。要するに、凶暴なライオンが残り、互角に立ち向かっていた人物は消失している事になります。

    残った画面からも強烈な猛々しさが伝わってくるだけに、なお一層「全部残っていたら…」という思いも感じます。


    4章「フランス革命からロマン主義へ」 ウジェーヌ・ドラクロワ《ライオン狩り》

    会場はこの後、5章「ボルドーの肖像 ── 都市、芸術家、ワイン」で近世以降のワインに関連する作品・資料や、アール・デコ芸術を紹介。そして「エピローグ ── 今日のボルドー」ではフランス人アーティストによる写真作品が展示されています。

    福岡市博物館からの巡回展(福岡市とボルドー市は姉妹都市関係です)で、国立西洋美術館が最後の会場です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月22日 ]

    鑑賞のための西洋美術史入門鑑賞のための西洋美術史入門

    早坂 優子 (著)

    視覚デザイン研究所
    ¥ 2,052

    料金一般当日:1,600円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■ボルドー展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年6月23日(火)~9月23日(水・祝)
    会期終了
    開館時間
    9:30〜17:30
    金曜・土曜日 9:30〜20:00
    ※「カフェすいれん」以外のミュージアムショップ等の館内施設の営業は開室時間と同じ
    休館日
    月曜日(ただし、7月20日、8月10日、9月21日は開館)、7月21日
    住所
    東京都台東区上野公園7-7
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.tbs.co.jp/bordeaux2015/
    料金
    一般 1,600円/大学生 1,200円/高校生800円
    ※20名以上の団体は各200円引き
    ※中学生以下は無料。
    ※心身に障害のある方および付添者1名は無料(入館の際に障害者手帳をご提示ください)。
    展覧会詳細 ボルドー展 ─ 美と陶酔の都へ ─ 詳細情報
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