江戸城、名古屋城、大坂城など、江戸幕府が築いた「天下普請」の城を紹介する企画展。この時代の城は軍事要塞としてではなく、政策的な必要性から築かれました。そこに求められるのは、権力を示す象徴としての城。堅牢な石垣、水をたたえた堀、そしてひときわ高い天守。現在、多くの人がイメージする城のスタイルは、実はこの時代に出来上がったものです(戦国時代の城はもっと素朴なものでした)。
会場公式サイトでは各々の城に横文字のニックネームが付けられており、これがなかなかユニーク。ここではまず「ヘッドクォーター」江戸城からご紹介しましょう。
江戸城関連の資料は最も数多く出展されていますが、注目は《朝鮮通信使図屏風》。左隻に本丸御殿での伝達式、右隻に城下での行列を描いています。明暦の大火で焼失する前の江戸城を描いた資料としても貴重な逸品です。
徳川幕府のヘッドクォーター、江戸城続いて大坂城、豊臣家にかわる威信を示した「シンボル」です。
大坂城の資料は、屏風や絵図などのほかに現物も。本丸の建物を飾った鬼瓦や、創建当時のものとされる鯱(しゃちほこ)の瓦などが目をひきます。
威信を天下に示したシンボル、大坂城《洛中洛外図屏風》で紹介されているのは、「レガシー」二条城。江戸時代には数多くの洛中洛外図屏風が制作されていますが、本展では8月30日まで歴博D本、9月1日からは歴博F本が展示されます。
琵琶湖に浮かぶ軍艦のような城は膳所(ぜぜ)城。鹿に見立てた大石で幕府の役人を追い払った事から「石鹿城」の別称があります。この地は京都の東の入口にあたり、政治・経済の両面で重要な場所。ここは「ディフェンス」の拠点、だそうです。
権威を今に伝えるレガシー、二条城 / ディフェンスの拠点、膳所城駿府城は家康晩年の「ホーム」、家康はこの地で75年の生涯を終えました。
美しい駿府城天守を40分の1で再現した模型は、静岡県立島田工業高校建築科の卒業制作。模型の前にはタブレット端末が用意されており、模型にかざすとARマッピングで「駿府城の四季」が上映されます。
家康晩年のホーム、駿府城会場内には大画面で江戸城の3DCGが楽しめるミニシアターも用意。将軍の執務室である「大広間」や忠臣蔵で有名な「松の廊下」などを、約4分の映像で紹介。城内を進んでいく構成で、なかなかの没入感です。
エピローグには、明治後の江戸城の姿を収めた古写真。幕藩体制の崩壊は、城の時代の終焉でもありました。会場最後は江戸城を明け渡して去る、勝海舟の肖像です。
江戸城の3DCG映像と、エピローグ会期は9月末までですが、会期中には展示替えがあります。江戸東京博物館のサイトに
展示リストがありますので、見たい作品がある方はお出かけ前にご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年8月3日 ]■徳川の城 に関するツイート