一昨年に開催が発表され、注目を集めていた「Seed 山種美術館 日本画アワード 2016」。完全公募制で応募総数は全259点。年齢は18歳から年齢制限上限の45歳まで、居住地も北海道から沖縄までと、幅広く作品が集まりました。
一次審査で88点に絞られた後、7名の審査員による実見で選ばれたのが、対象も表現手法も多彩な40点の入選作です。
作品はミクストメディア(混合技法)も可ですが、「墨、岩絵具、胡粉、膠などを主に使用」「多様な画材を使用しながらも、従来の日本画の技法に立脚した作品」と、基本的には伝統的な日本画を求めるもの。もちろん新作ばかりですが、その中でもバラエティ豊かで若い個性があふれています。
会場大賞に選ばれたのは、京都絵美さんの《ゆめうつつ》。はかない日常の揺らぎを描いたという本作は、ぼかしの中から浮かび上がるような魅力的な女性像です。
日本画といえども紙に厚塗りで描く手法が現代では多く見られますが、京都さんは絹本に薄描き。仏画の研究を自作に取り入れています。ちなみに、お名前の読みは「みやこ えみ」さん。雅号ではなく本名です。
優秀賞は長谷川雅也さんの《唯》。見慣れた紫陽花を包み込む青と緑のグラデーションが、実に鮮やか。とても目を引く作品です。
大賞・京都絵美《ゆめうつつ》 / 優秀賞・長谷川雅也《唯》会場後半には、以前開催されていた「今日の日本画 山種美術館賞展」から第1回~第4回の受賞作品も並びます。
同展は初代館長の山﨑種二氏(現館長の山﨑妙子氏の祖父)が創設。隔年で14回開催され、私立美術館が若手作家を応援する賞の草分け的な存在として高い評価を得ていました。受賞作家や出品作家には、現在、画壇の中心的な存在として活躍している人も多数います。
「今日の日本画 山種美術館賞展」の受賞作品ミュージアムショップでは、山種美術館ではお馴染みのハンディサイズの図録も好評販売中(税込 1,080円)。本図録では入選作家40人全員のコメントと顔写真が紹介されており「この人がこの絵を描いたの?!」という驚きがいくつもありました。
本展以降は、山種コレクションの名品選がⅠ・Ⅱと続きます。名品選Ⅰが開催中の7月7日(木)は山種美術館の開館記念日という事もあり、なんとこの日は来館者全員に、8月27日から開催される「浮世絵六代絵師の競演」展の招待券1枚がプレゼントされるという太っ腹企画も発表されました。カレンダーにマークしておいてください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年5月30日 ]■Seed 山種美術館 に関するツイート