ロートレックは1864年、由緒ある貴族の家系に生まれました。十代前半に両脚を骨折したこともあり、成長が身長150cmほどで止まってしまうという不幸に見舞われたものの、画家であった叔父や両親の後押しを得て、本格的に絵の道に進みます。
パリでは歓楽街モンマルトルに惹かれ、キャバレーやダンスホールに通い詰めるとともに挿絵などを創作。1891年に手がけたリトグラフのポスター「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」は大評判となり、一躍注目を集めます。その後も精力的に創作を続けましたが次第にアルコールに心身を蝕まれ、36歳で早世しました。
会場三菱一号館美術館は2010年4月の開館。開館時に美術館所蔵品の核としてあったのがロートレック作品で、本展はこれらの作品を紹介する初めての展覧会となります。
作品はロートレック自身が生前に自分のアトリエにおいていたもので、版画の試し刷りや、希少な色違いの版画などのほか、親しい友人たちを招いて料理を振舞った晩餐会のための招待状やメニューカードなど、ロートレックの私的な生活と交友関係を垣間見ることもできる資料もあります。
リトグラフ「女性の研究」とその習作展覧会では有名な数々のリトグラフポスターはもとより、前述した試し刷りの版画や、色違いの版画、また、三菱一号館美術館の姉妹館である仏アルビのトゥールーズ=ロートレック美術館から画塾時代の素描や油彩なども借り受け、故郷アルビの街とパリ・モンマルトルの歓楽街での創作活動が紹介されます。
ロートレックの版画には、女優のマルセル・ランデールなど、自分が劇場通いの中で見つけたお気に入りの人物が描かれているものもあります。会場には人物の写真も一緒に展示されているものがあり、版画と実際の写真を見比べて楽しむこともできます。
女優のマルセル・ランデールと、彼女を描いた版画ロートレックは美食家としても知られていますが、丸ビル一階の「丸の内カフェ ease」では4人のフレンチシェフがロートレックのレシピを再現。美術館に隣接するブリックスクエアにあるレストラン「ミクニ マルノウチ」や、美術館1階の「カフェ1894」でもロートレック展に合わせた特別メニューを用意するなど、楽しいコラボ企画も盛りだくさんです。公式サイトでご確認のうえ、お出かけください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年10月12日 ]