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    レポート
    はじめての古美術鑑賞 絵画の技法と表現
    根津美術館 | 東京都
    溌墨・外暈・繧繝彩色…何て読む?
    若冲など一部のブームを除くと、どことなく取っつきにくい感じがする日本美術。その鑑賞の手助けになるのが、独特の技法や用語です。実際にその技法が使われている作品を見ながら、絵画の墨と金の使用法を中心に紹介する展覧会が、根津美術館で開催中です。
    【外暈(そとぐま)】 (右から)重要美術品《白衣観音図》赤脚子筆 / 《富嶽図》仲安真康筆 / 《楊柳白鷺図》
    【たらしこみ】 (右から)《老子図》伝 俵屋宗達筆《木蓮棕櫚芭蕉図屏風》伝 立林何帠筆
    【溌墨(はつぼく)】(右から)《潑墨山水図》雲渓永怡筆 / 沢庵宗彭賛《潑墨山水図》周徳筆
    【付立て(つけたて)】 重要美術品《花卉図襖》松村景文筆
    【金雲(きんうん)】 《両帝図屏風》狩野探幽筆
    【白描(はくびょう)】 《大元帥明王・四天王図像》
    【截金(きりかね)】 (右から)重要文化財《愛染曼荼羅》 / 《阿弥陀三尊来迎図》
    【裏箔(うらはく)】 (右から)《興福寺南円堂曼荼羅》 / 《藤原鎌足像》
    【繧繝彩色(うんげんざいしき)】 (右から)《壬生寺地蔵菩薩像》 / 重要文化財《愛染明王像》

    愛らしい聖母子、ギリシャ神話の悲劇…直感的に訴えてくる西洋美術に比べ、日本美術はどことなく地味。年齢を重ねないと理解できない、と思っている方がいるかもしれません。


    初心者を遠ざけているのが、その用語。確かに「溌墨」「外暈」「繧繝彩色」などは、ある程度日本美術を見ている方でも、そもそも文字すら読めないもしれません(それぞれ「はつぼく」「そとぐま」「うんげんざいしき」)です。


    今回は、その難解な用語を解説してくれる有り難い企画。全部で9つの絵画の用語が紹介されています。ここではうち3つをご紹介しましょう。


    会場


    まずは「たらしこみ」、これはご存じの方も多いと思います。墨や絵の具が乾かないうちに、別の墨や色を加える事によって、意図的に滲ませる技法です。


    俵屋宗達による創案といわれ、琳派の証のような技法。会場で紹介されている屏風は伝・立林何帛と、喜多川相説による作ですが、ともに琳派の絵師です。


    「たらしこみ」


    次いで「付立て(つけたて)」。日本画は輪郭線を描くのが特徴のひとつですが、この手法は輪郭を用いず、筆の穂の側面を使い、ひと筆で描くやり方。筆に含まれる墨や色の濃淡で、陰影や立体感を表します。


    これは、応挙から連なる円山派と、その流れを汲む四条派の得意技。展示されている長沢蘆雪は応挙の弟子、松村景文は四条派の絵師です。葉などが「付立て」で描かれています。


    「付立て(つけたて)」


    「截金(きりかね)」は、金箔や銀箔を、細い線や三角・四角・菱形などに切り、絵画や彫刻に貼り付ける技法。光を反射するため、仏の着衣や光線など仏画でよく使われます。


    細かな模様を切った金属箔で表現するのは、まさに手先が器用な日本人ならではといえます。


    「截金(きりかね)」


    専門用語を知る事で、より深い美術鑑賞が可能に。デートで知識を披露すれば、あなたの株も上がるかもしれません。その他の技法は「溌墨(はつぼく)」「外暈」「金雲(きんうん)」「白描(はくびょう)」「裏箔(うらはく)」「繧繝彩色(うんげんざいしき)」、会場でお楽しみください。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年7月22日 ]


    日本美術史 JAPANESE ART HISTORY日本美術史 JAPANESE ART HISTORY

    山下裕二 (監修), 高岸輝 (監修)

    美術出版社
    ¥ 3,024


    ■はじめての古美術鑑賞 に関するツイート


    会場
    会期
    2016年7月23日(土)~9月4日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日
    住所
    東京都港区南青山6-5-1
    電話 03-3400-2536
    公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
    料金
    一般1100円、学生[高校生以上]800円
    中学生以下は無料
    展覧会詳細 はじめての古美術鑑賞 絵画の技法と表現 詳細情報
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