エリック・カールは米国・ニューヨーク州生まれ。初期はアート・ディレクターやグラフィック・デザイナーとしてキャリアを重ねていました。
初めての絵本は、1967年の『くまさん くまさん なに みてるの?』。ビル・マーチン・Jr.が文を書き、カールは挿絵を手掛けました。絵本の成功で自信を深めたカールは、翌年に自作の絵本を出版。さらに次の年に出版されたのが『はらぺこあおむし』です。
本展には米国・マサチューセッツ州のエリック・カール絵本美術館が協力。代表作の原画をはじめ、素描、ダミーブック、立体作品などで、カールの創作の源泉と拡がりを楽しむ事ができます。
会場は2部構成。第1部「エリック・カールの世界」では、さらに「動物たちと自然」「旅」「昔話とファンタジー」「家族」という4つの小テーマで、カラフルな絵本の原画が展示されています。
第1部第2部は「エリック・カールの物語」。絵本以外の作品も含めて、カールの世界を深く掘り下げていきます。
青少年時代をナチス政権下のドイツで過ごしたカール。ナチスは前衛美術に「退廃芸術」というレッテルを貼りましたが、カール少年の才能を見抜いていた美術教師はひそかに前衛美術を見せ、カールはその色彩に強い衝撃を受けました。この体験が、後のカールの創作に繋がったのです。
カールが特に愛していたのが、前衛画家のフランツ・マルクとパウル・クレー。敬愛する画家との関連がみられる絵本原画も展示されています。
さらに、カールと日本との関係も紹介されています。世界中で愛されている『はらぺこあおむし』ですが、実は初版は日本で製作されたもの。丸い穴を開けるなど複雑な製本が米国では高額だったため日本で作られたのです。カールは日本を愛し、1985年以来5度の来日を果たしています。
第2部小さな子どもに人気のエリック・カールなので、世田谷美術館も準備万端。2階の講義室を乳幼児休憩室としてご利用いただけます(10時~18時、会期中限定)。「子ども連れで美術館はちょっと…」という方も、ぜひ足を運んでください。
展覧会は世田谷美術館から全国巡回。京都、岩手、福島と回ります。会場と会期は
こちらです。
なお、世田谷美術館はこの展覧会の後に改修工事のため長期休館となります(2018年1月12日まで)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月21日 ]