日本の歴史と文化について総合的に研究・展示する国立歴史民俗博物館。戦後の社会運動については常設展(総合展示)の第6室でも紹介されていますが、3年前に東大闘争と日大闘争の資料を受け入れた事を期に、「1968年」を中心とした企画展としてまとめられました。
展示は2部構成で、第1部は「「平和と民主主義」・経済成長への問い」。大きく紹介されているのが「ベ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)です。中央の組織をもたず、各地で自発的に発足したベ平連。フォークソングなど若者文化も取り入れ、大きなうねりになりました。
空港建設という国策に、地域の農民が集落ぐるみで対峙した三里塚闘争。素朴な抗議活動から新左翼を巻き込んだ闘争へと激化。成田空港が死者を含む暴力を経て開港した事を知らない世代も増えてきました。反対同盟農家の子どもによる「少年行動隊」の資料は胸に迫ります。
第1部「「平和と民主主義」・経済成長への問い」第2部は「大学という「場」からの問い―全共闘運動の展開」。日本の大学生は1965年に初めて100万人を突破。1960年代末に、日本の学生運動は大きな高まりを迎えます。
全共闘(全学共闘会議)は各大学に組織されましたが、規模も影響力も大きかったのが日大全共闘と東大全共闘。経理不正問題(日大)、学生処分問題(東大)に端を発し、日大はバリケード闘争、東大では安田講堂占拠と運動は拡大していきました。
東大・日大での動きは、全国に波及。北海道大学、弘前大学、広島大学などの学生運動の資料も展示されています。
その後、学生運動は急激に鎮静化。全共闘の問題意識は後の運動にも影響を与えていますが、その評価は一様ではありません。
第2部「大学という「場」からの問い―全共闘運動の展開」印刷物を中心とした資料が多いため会場風景は派手ではありませんが、相当に密度が濃い企画展です。リアルタイムで体験したシニアの方も、映像や文献でしか見た事が無い若い方も、腹を据えてどうぞ。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年10月10日 ]■歴史民俗博物館 1968年 に関するツイート