IM
    レポート
    ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯
    パナソニック汐留美術館 | 東京都
    東アジアを取り込んで
    ハンガリーを代表する高級磁器窯、ヘレンド。1826年に創設、ハプスブルク家の保護を受けて「オーストリア帝室・ハンガリー王室御用達」として発展し、現在でも高い評価を得ています。開窯初期の希少な逸品から現在の製品まで、ヘレンド190年余の歴史を振り返る展覧会がパナソニック 汐留ミュージアムで開催中です。
    (左奥から)《金彩「ウエールズ」文龍飾りビアマグ》1881年 / 《色絵金彩「ウエールズ」文蜥蜴飾りティーセット》1874年 ともにブダペスト国立工芸美術館
    (左奥から)《色絵金彩ビーダーマイヤー様式花綵文ティーセット》1850年頃 ハンガリー国立博物館 / 《色絵金彩浮彫「水の寓意」飾り水差》(「4大元素シリーズ」より)1846年 ヘレンド磁器美術館
    (左手前から)《色絵金彩「バラトンフュレド風景」図コーヒーセット》1860年代 ブダペスト国立工芸美術館 / 《色絵金彩人物風景図カップ・受け皿》1856年 ブダペスト国立工芸美術館 / 《色絵鳥図皿》1857年
    (左奥から)《黄地色絵花樹文人物飾り壺》1860年代 / 《黄地色絵花卉文龍飾りティーポット》1860年頃 ハンガリー国立博物館 / 《色絵金彩「皇帝」文ティーセット》1860年代 ヘレンド磁器美術館
    (左から)《色絵金彩人物図皿》1860年頃 / 《色絵金彩「広東」様式人物図獅子飾り蓋瓶》1856年以降 ともにブダペスト国立工芸美術館
    (左から)《「トロンプ・ルイユ」花卉果実飾り皿》1887年か / 《色絵花束文花綵飾りセンターピース》1880年頃 ブダペスト国立工芸美術館
    (左から)《色絵金彩「京都」文獅子飾り蓋壺》1890年頃 / 《色絵金彩花鳥文獅子飾り蓋壺・広口瓶》1870-1875年 ともにブダペスト国立工芸美術館
    《「すやすや眠る日本の子供」》1900-1910年 ヘレンド磁器美術館
    (左奥から)《「ルネサンス風の意匠をつけたカーニバルの貴婦人」》イムレ・シュランメル 1998年 / 《色絵金彩凧文透彫コーヒーセット》パールマ・バボシュ(デザイン) デザイン:1997年 ともにブダペスト国立工芸美術館
    ヘレンドの前身は、1826年に創設されたクリームウェア製陶所です。上質な陶器を作っていましたが、破損しやすい事もあり現存する作品はごく僅か。展展覧会は、当時の貴重な皿からスタートします。

    現在に至るヘレンドの名声を築いたのが、モール・フィシェル(1799-1880)です。貴族たちが所有していた磁器セットの割れてしまった器の補充や、逸品の複製などを積極的に手掛ける事で、ヘレンドの技術は飛躍的に向上。また当時盛んに行われた国際的な博覧会にも参加し、優れた製品が注目を集めるようになります。

    この時期に最も高い人気があったのは中国の磁器、次いで日本の磁器でした。欧州の他の名窯と同様、ヘレンドも東洋磁器の複製を作る中で、技術を徹底的に研究しました。忠実なコピーを作るとともに、東洋のモチーフを取り入れた独自の造形も手掛けていきます。


    第1章・第2章

    モール・フィシェルの息子たちの時代になると、従来の手法を引き継ぐ一方で、新しい製品開発も進めます。

    セーヴル窯を意識した紺色の地に金彩を施したロココ風の装飾は、その一例。トロンプ・ルイユ(騙し絵)は絵画の手法ですが、立体版のトロンプ・ルイユとして、野菜や果物などを盛った器全体を陶器で表現したものもあります。

    二重の器壁に透かし彫りの装飾を施した「ウエールズ」文は、この時代を代表する手法。高い技術に裏打ちされた豪奢な表現は、日本の明治工芸を思わせます。

    柿右衛門のモチーフを取り入れた「ゲデレー」文は、オーストリア皇妃兼ハンガリー王妃エリザベートが愛したゲデレー宮殿で使うために作られました。


    第3章

    19世紀末のハンガリーは建国1000年祭を控えて、民族意識が高揚。ヘレンド窯でも民族的な装飾様式「ハンガリアン・ナショナル」文様が確立し、重要なモチーフとなりました。

    ふたつの世界大戦の間には、それまでほとんど作られなかった磁器人形にも進出。ハンガリー彫刻の傑作を磁器で再現しました。

    第二次世界大戦後にハンガリーが共産圏に入ると、ヘレンドも国有化されます。一時、贅沢品としての磁器製作から離れますが、1990年代には再び民営化。窯の見学者に向けた設備を整え、社内アトリエも開設し、現在でも技術とデザインの両面でさらなる進歩を続けています。


    第4~7章

    日本におけるヘレンド展は、1993-94年の「ハンガリーの名窯 ヘレンド陶磁名品展」、2000年の「ヘレンド ~ ドナウが育んだ名陶 皇紀エリザベートが愛した華麗なる輝き」以来3回目ですが、今回はブダペスト国立工芸美術館が所蔵する名品をはじめ、逸品が多数出展。過去最高のヘレンド展となりました。華やかな器の数々は、特に女性の熱い視線を集めそうです。

    ふくやま美術館からはじまった巡回展で、パナソニック 汐留ミュージアムで5館目。東京展が最終会場となります。一部の作品は展示替えがあります。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年1月12日 ]

    美術展完全ガイド2018美術展完全ガイド2018

     

    晋遊舎
    ¥ 1,080


    ■ヘレンド展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2018年1月13日(土)~3月21日(水)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(入館は17:30まで)
    休館日
    水曜日(ただし3月21日は開館)
    住所
    東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4階
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト https://panasonic.co.jp/es/museum/
    料金
    一般:1,000円/65歳以上:900円/大学生:700円/中・高校生:500円/小学生以下無料
    ※20名以上の団体は100円割引き ※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
    展覧会詳細 ヘレンド展 ― 皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)