尾形光琳が手掛けた傑作、国宝《燕子花図屏風》。知名度や人気の高さは、今さら説明するまでもないでしょう。今年秋には、パリ・エッフェル塔をライトアップするプロジェクトで映像として投影されるとのニュースも(
詳しくはこちら)。まさに日本美術の顔といえる存在です。
今回の展覧会は、展示室1の「光琳の絵画」から。会場入ってすぐの右奥に、国宝《燕子花図屏風》が展示されるのは、ちょっと珍しい構成です。
手前にある《秋草図屏風》とは、彩色の仕方などにかなりの差異があります。《夏草図屏風》との比較では、同じカキツバタが描かれていますが、夏草図のほうが写実的です。
装飾性が高い彩色画に対し、文人趣味が強く感じられるのが水墨画。新出の《寿老人図》はユーモラスな表現です。
「光琳の絵画」隣の展示室2は「乾山の書画」。乾山は、光琳とは5歳違いの弟。陶工として有名ですが、ここでは絵画が紹介されています。
一見では素人っぽく見える、乾山の絵画。むしろ稚拙さを恥じる事なく、それを美と誇るような伸びやかさも特徴的です。
多くの絵には自賛も添えられ、書画一致の世界をつくっています。
「乾山の書画」2階の展示室5は「乾山のやきもの」。多様な作品の中から、今回は「絵」をキーワードにした作品が並びます。
注目は、乾山焼と画家・渡辺始興の関わりについて。展示されている《銹絵蘭図角皿》の裏に「表の一連は渡辺素信が書いた」と記されています。それまで「一連」は蘭の絵だと考えられていましたが、近年の研究で、傍らの漢詩を指すのでは、という解釈が発表。渡辺始興の書との類似性が認められ、渡辺素信=始興と判明しました。この結果、角皿は絵・漢詩ともに始興によるものとされ、本展から「尾形乾山作、渡辺始興画賛」として展示されています。
はじめ狩野派に学び、後に光琳を師にしたと伝えられている渡辺始興。円山応挙が私淑していたという実力者ですが、乾山焼との関わりが確実になった事で、この後も新たな研究が進みそうです。
「乾山のやきもの」根津美術館の庭園のカキツバタも、順調に開花中。例年は5/1頃が満開になりますが、今年は少し早めかもしれません。
展覧会を見た後、庭園内のNEZU CAFEでひとやすみ。庭園に下りて本物のカキツバタを見た後に、再び《燕子花図屏風》を鑑賞が、おすすめコースです。5/8~13は19時まで開館しています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年4月13日 ]■光琳と乾山 に関するツイート