写生を重視した絵画で支持を集めた円山応挙が確立した円山派。与謝蕪村と応挙に学んだ呉春が興したのが四条派。両派を合わせた呼び方が円山・四条派です。
展覧会は、3階の第1会場から。冒頭はスター・ウォーズのオープニング風。映画は「遠い昔、はるかかなたの銀河系で....」ですが、「250年ほどの昔、京都で…」と、円山・四条派の大河が楽しく説明されています。
第1章「すべては応挙にはじまる。」に、早速、大乗寺の障壁画が登場します。
兵庫県香美町にある大乗寺。応挙は一門を率いて、客殿各室の障壁画を手掛けました。展覧会では応挙の《松に孔雀図》をはじめ、円山応瑞、呉春、山本守礼の障壁画が、実際の配置どおりに展示されています。大乗寺襖絵の展示は、東京では約10年ぶりとなります。
応挙の《写生図巻》も注目。写生と言っても、実物を描いたスケッチではなく、スケッチを清書したものである事は注意が必要ですが、対象を正確に描くさまは、博物図譜のようです。
第2章「孔雀、虎、犬。命を描く。」には、さまざまな生き物の姿が。応挙の画業を俯瞰する上で、忘れてはならないのが清の画家・沈南蘋(しんなんぴん)からの影響です。色彩豊かな花鳥画は全国的に大流行し、応挙もその画風を摂取しています。
《魚介尽くし》は、新発見の作品です。森寛斎ら総勢28名(ほぼ全員が円山・四条派)が、ひとつの画面に魚介類を描いた合作です。多くの画家が関わっているのに同じ調子で描かれ、作品としての統一感があるのは特筆されます。
地下の展示室に進むと、第3章「山、川、滝。自然を写す。」から。自然を描くのも、前の時代は現実離れした名所絵でしたが、応挙は実際の場所を描写。保津川や嵐山など、京都の風景を描いています。
ただ、実は応挙は旅嫌い。同時代の画家・池大雅が各地を歴訪しているのに対し、応挙はほとんど京都を離れて事はなく、大乗寺にも一度も足を運んだ事はありませんでした。
展覧会の最後は「美人、仙人。物語を紡ぐ。」です。応挙の美人画はあまり多くありませんが、中国の貴婦人像をベースに、品格ある女性を描きました。
円山・四条派の流れで美人画といえば、上村松園。「西の松園、東の(鏑木)清方」と称され、気品ある女性の姿を数多く描きました。
京都画壇の本流を東京で一望できる、ありがたい展覧会。東京展の後に京都に巡回(京都国立博物館:11/2~12/15)、大乗寺障壁画の残り半分は京都展で展示されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2019年8月2日 ]
※前期(8/3~9/1)と後期(9/3~9/29)で大幅な展示替えがあります。