上海の著名中国画家である、王宏喜(おうこうき)、潘宝珠(はんほうじゅ)夫妻。ともに人物画が高く評価されており、孔子や老子、三国志などの古代人物画から、上海万博の労働者、現代の少女など、中国の人々の姿を情緒豊かに捉えた作品が特徴です。王宏喜氏は1939年生まれ。中国著名文化人の作品を多数制作しており、国内外で活躍。日本でも1986年に大阪・堺市博物館で個展を開いたこともあります。潘宝珠氏は1943年生まれ。幼少より画を学び、中国画の草花や竹、優美な女性画を得意としています。
会場には、王・潘夫妻の中国画40点余りが展示されました。王宏喜氏の作品は、劇画のようなタッチ。桃園で誓いあう劉備・関羽・張飛、孫権の参謀を説き伏せる凛とした諸葛孔明。三国志ファンにはおなじみの場面が生き生きと描かれています。一方の潘宝珠氏の作品は、女性らしい慈愛を感じさせるもの。特に子どもを描いた作品が注目を集めていました。
多くの挿絵も描いている王宏喜氏。こちらは三国志の挿絵。取材に伺った展覧会初日(2011年6月6日)の開幕式には王・潘夫妻が出席し、式典の後には制作実演が行われました。実は今回の取材は、この実演がお目当て。プレスリリースを見て一目惚れした情緒豊かな作品が、どうやって描かれるのか。百聞は一見にしかず、以下の動画をご覧ください。
制作開始。もちろん、衆人環視の中です。躊躇せずに筆を走らせます。ただ、「タバコが吸えない」という愚痴が出ていました(笑)作品は夫人との合作。左側の背景部分は夫人が進めます。最後の書も一気に。会場からは感嘆の声が上がっていました。多数の来場者が見守る中でも、一気に描き上げた夫妻。張り詰めた空気の中でも全く躊躇しない筆運びは、第一人者の風格が漂っていました。
会場は日中友好会館美術館。飯田橋の小石川後楽園の隣です。日中友好会館は日中友好活動の拠点として建設された建物で、中国人留学生のための宿舎「後楽寮」、専門学校「日中学院」、太極拳や気功教室が開かれている「日中健康センター」などとともに、美術館も設けられています。本展は6月26日までの開催。入場無料(水曜は休館)ですので、お気軽に足を運んでみては?
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年6月6日 ]