ジャポニスムはモネやゴッホなど絵画の世界にとどまらず、「遠い異国を連想させる品々を身近において愛でる」という趣向は、一般大衆の生活にも根を下ろして行きます。大量消費時代を迎えた欧米社会の広範な領域でジャポニスムをテーマにした様々な作品が生み出され、人々の生活に新たな異国情趣を添えていったのです。
本展覧会は、英国や米国で創り出されたジャポニスム様式の陶磁器や銀器、ガラス作品や服飾品を紹介するもの。扇、蜻蛉(トンボ)、鶴、鯉、竹、桜…。我々にとっては見慣れた題材ですが、当時の西洋人にとってはとてもエキゾチックなモチーフだったのでしょう。手の込んだ細工のティーカップやカトラリーは、当時の芳潤な生活文化を垣間見ることができます。
当時のアフタヌーン・ティーのテーブルセッティング展示会場の目玉ともいえるのが「ジャポニスムの茶会」のコーナー。当時、一般のものになりつつあったアフタヌーン・ティーのテーブルセッティングが、会場に再現されました。同じ部屋にはカップとソーサーが横一列にならんだ圧巻の展示もあり、多くの注目を集めていました。
横一列に並んだカップとソーサー、圧巻です最後に、三菱一号館美術館についてご紹介します。三菱一号館は、開国間もない日本政府が招聘した英国人建築家ジョサイア・コンドルが1894(明治27)年に設計した洋風事務所建築です。震災や戦災も免れオフィスビルとして使われていましたが、1968(昭和43)年に老朽化のために解体。その後40年あまりの時を経て、コンドルの原設計に則って同じ地によみがえり、2010(平成22)年春に三菱一号館美術館として生まれ変わりました。
東京都心・丸の内にあるレンガ造りの瀟洒な建物。とてもお洒落なカフェ「Café 1894」は、かつて銀行の営業窓口として使われたフロアを使ったもので、美術館ともどもオススメです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年6月13日 ]