ボローニャ・ブックフェアが開催する同展は、絵本のイラストレーションに特化したコンクールで、国際的にもっとも大規模かつ権威あるものとして知られています。開催は1967年からで、実に今回で45回目。2011年は世界58ヶ国、2,836作品の応募があり、その中から日本人19人(組)を含む20ヶ国76作家が入選しました。
毎年、同展はボローニャでのブックフェア終了後、7月から日本各地を巡回しています。今年も板橋のあとは
西宮市大谷記念美術館(兵庫)、
高浜市やきものの里かわら美術館(愛知)、
石川県七尾美術館と巡回されます。
板橋区立美術館での同展開催は、今年で31回目。板橋区はこの展覧会の縁もあって、2005年にはボローニャ市と友好都市提携も結んでいます。
会場。来場したお客様はゆっくりと熱心に見る方が多いそうです。美術館二階の展示室に上ると、入選作がずらり。国籍も地元イタリアをはじめドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパ諸国からイラン、メキシコ、タイ、台湾など、国際色豊かな顔ぶれが並びます。日本人作家は数も多く目立っていますが、最近は韓国勢の躍進が顕著だそうです。
国籍だけでなく、技法や作風も様々。細い線でビッチリと描き込まれたモノトーンの作品、水彩と色鉛筆のほのぼタッチの作品、コラージュ写真で作られた重い雰囲気の作品など、絵本の画には決まった型がないので、とてもバラエティーに富んでいます。
また、会場には絵本の実物が展示されているものもあり、自由に手にとって見ることができます。文字が入って製本された絵本を見ると、原画とはまた違った印象も受けます。
フィリップ・ジョルダーノが描いた「かぐや姫」。五人の王子が失敗を続けるシーン。今回のもうひとつの目玉は、イタリアの若手イラストレーター、フィリップ・ジョルダーノによる絵本原画の特別展。同展入選作家の中で35歳以下を対象にした「ボローニャSM出版賞」を受賞した氏の作品は、なんと日本の「かぐや姫」。基本的なかぐや姫のストーリーはそのままですが、かぐや姫に求婚する五人の王子が仮面をかぶっていたり、かぐや姫にいつも寄り添っている精霊がいるなど、オリジナルの解釈を加えて描いています。日本人の我々が見ると、不思議な感じがする作品でした。
最後に、
板橋区立美術館をご紹介します。東京23区の区立美術館は、
渋谷区立松濤美術館(昭和56年開館)、
練馬区立美術館(同60年)、
世田谷美術館(同61年)、
目黒区美術館(同62年)などがありますが、最初にできたのがこの
板橋区立美術館で、昭和54年の開館です。
西高島平駅から徒歩13分と少し離れていますが、すぐ裏手は赤塚城址の公園が広がっているほか、近くには松月院、乗蓮寺(東京大仏)など史跡も多くあります。公式サイトにはお散歩マップも用意されていますので、涼しい時間帯に散策してみてください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2011年7月7日 ]