「草を塀に木の根を枕、花と恋して九十年」と、それまでの人生を回顧して詠んだ牧野冨太郎博土(1862-1957)は、子供の頃から植物に心惹かれ、終生植物研究に勤しみました。しかしながら、思い通りにいかない植物図説の出版、多額の借金や大学との確執など何度も苦境におかれたことを自叙伝に記しています。こうした困難を乗り越え、花とともに歩んだ博土の人生を、2019年春に刊行された絵本『牧野富太郎ものがたり草木とみた夢』(谷本雄治・文、大野八生・絵出版ワークス)の原画でたどる企画展を開催いたします。
展示内容は、原画を中心にして、メガネや帽子など絵本に登場する博土愛用の品々です。また、博士が小学生の頃に植物を学ぶ上で役立ったという『博物図』(1813年文部省発行)の植物5図のうち第2・3図(レプリカ)を展示いたします。大野八生氏は造園家でもある経験・視点を活かして植物をテーマにした絵本を数多く手がけられています。大野氏が描かれたこうした作品のーつでもある『夏のクリスマスローズ』の原画も展示いたします。