「美術館」と聞いた時、まず思い浮かぶのは、きらびやかな作品が並ぶ展覧会のイメージではないでしょうか。しかし、華やかな展覧会の開催だけが美術館の使命ではありません。美術館はアートを「収集」し、次世代に託すために「保存」する現場でもあるのです。
本展では「収集」と「保存」という、美術館が司るふたつの機能に着目してコレクションを展観します。「収集」のセクションでは、「なぜこれがここにあるのか」という視点から、来歴や収蔵経緯、アート市場における評価など、収集にまつわる様々なエピソードを交えて作品をご紹介します。一方の「保存」では、当館が1998年の高知豪雨水害で被災した歴史を踏まえた上で、作品修復や素材技法を調べるための科学分析、作り手であるアーティストへのインタビューといった多角的なアプローチを通し、姿かたちを持つ作品=モノを、美術館という制度で残し伝える営みが孕む限界と可能性を探ります。
美術館で作品を「あつめてのこす」にあたって生起する出来事や課題を知ることは、通常の鑑賞体験では見過ごされがちな、過去に作品と関わってきた人々の記憶に触れることにもつながります。本展は、当館のこれまでのコレクション形成の歴史を辿るだけでなく、作品の過去と未来の姿に思いを馳せ、地域における美術館の役割を再考する機会となるでしょう。