柳宗悦は1913年に東京帝国大学哲学科卒業後、無名の職人が作る民衆の日常品の美に着眼し、日本各地の手仕事を調査、蒐集しました。
本展では、柳が蒐集した柳文庫の蔵書を中心に「工芸品」としての書物が展示、紹介されています。一冊ずつ人の手によって作られた本は、どれも生き血が通っているかのような温かみがあります。
1階広間「書物工芸」、2階第3展示室「挿絵本」、2階第4展示室「浄土教聖教の仏書」2階の第4展示室では、晩年に「仏教美学」を提唱した柳が蒐集した仏教関係の書物が展示されています。
柳は、信仰のための実用品として発達した浄土真宗の古版本である「和讃」や「御文」を、書物として高く評価していました。その造本は見事なものです。
《色紙和讃(三帖和讃・正信念仏偈)》の製本は、粘葉装(でっちょうそう)。朱色に染めた紙と、黄色に染めた紙が交互に来るようになっています。
あまり馴染みがない「粘葉装」は、二つ折りにした紙の山の部分に糊を付け、それをとじしろと重ね、貼り合わせていく製本方法です。
2階大展示室「雑誌『工藝』と私版本」1931年に創刊された雑誌『工藝』は、民芸運動の機関紙。装幀は年度ごと大きく改変されました。
漆工芸作家・鈴木繁男が担当の際、表紙は「漆」で制作されました。よく見ると『工藝』の文字が膨らんでいます。1年で出版される計12冊を並べてみると、それぞれ違った味を出す美しい装幀に圧巻されます。
柳は1924年から「木喰仏」の調査研究も行いました。《木喰上人作木彫仏(甲種製本)》 は、表紙に木喰の生地・甲州産のなめし革と手織布が使用されています。ぜひ近くでご覧ください。
柳宗悦が巡り合わせたのか、こちらの「木喰仏」に関する展覧会が
身延町なかとみ現代工芸美術館で7月14日から開催です。夏のご旅行に、こちらもあわせていかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:静居絵里菜 / 2018年7月4日 ]