縄文時代~弥生時代~古墳時代と続く日本の古代史。ただ、平安京が作られたり、大政奉還があったりしたわけではないので「弥生時代は○○年から」と、きっちり決められるものではありません。
また弥生時代の文化は地域によっても差があり、何をもって弥生とするか研究者によってさまざまな説があります。弥生とは何か、本展はその諸説を考察する企画展です。
会場入口弥生時代の教科書的な流れは、水田稲作の開始→農耕社会の成立→有力者の出現→古墳の誕生。ただ、これはあくまでも九州や近畿など新潟から千葉を結ぶ線の西方の話で、それ以東・以北では状況が異なります。例えば青森では水田稲作を300年行った後に、採集狩猟生活に戻っているのです。
会場には、本展を監修した
国立歴史民俗博物館(歴博)副館長の藤尾慎一郎教授と、東京大学の設楽博己教授による弥生論を併記。会場には8カ所の質問コーナーがあり、二人の教授がそれぞれの説を説明します。
メガネの弥生人が藤尾教授、顔に入れ墨をした弥生人が設楽教授です日本各地で発見されている遺跡も、二人の意見が異なる地点があります。
九州は比較的分かりやすく、例えば竪穴式の住居跡や建物跡などが見つかった福岡市の原遺跡(前9~前7世紀)は、二人とも「弥生である」と主張。一方で青森・弘前市の砂沢遺跡(前4世紀)は、縄文人の"むら"に隣接して見つかった水田跡(会場冒頭の土偶もここで発見されたものです)。設楽教授は「弥生」としますが、藤尾教授は「縄文でも弥生でもない別の文化」と考えています。
福岡市の原遺跡と、弘前市の砂沢遺跡展示の目玉のひとつが「弥生ちゃん」(仮)。山口県土井ヶ浜で発見された実物の頭がい骨(推定年齢17歳)をもとに顔を復元し、当時の高貴な女性が身に着けていた衣裳を身に着けました。
会場では、弥生人の衣装体験も実施中。スタッフに手伝っていただけるので、あっという間に弥生美人の完成です。このコーナーは、お手持ちのカメラやスマートフォン等での記念撮影もできます(衣装は成人女性と女児用ですが、男性も試着可能。身長165cm以下の方のみ)
「弥生ちゃん」(仮)と、弥生人の衣装体験コーナー人気になりそうなのが、日曜日を中心にガイダンスルームで行われる鋳造体験。低融点の特殊な合金を使って、銅鐸、銅鏡、銅銭(和同開珎、富本銭)のミニチュア作りが体験できます。
受付は実施日当日(事前予約不可)。日程や時間などの詳細は、
歴博の公式サイトでご確認ください。
金属器の鋳造体験一般的な企画展は、学術的に定まっている事象を分かりやすくまとめて見せるものですが、本展は「定まっていない」という状態そのものを見せる企画。「調査研究機能を持つ大学共同利用機関」という位置づけがある歴博ならではの企画展です。歴史的な事象も、調査・研究は現在進行形で進んでいるのです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月14日 ]■弥生ってなに に関するツイート