堀浩哉は1947年富山県高岡市に生まれ、1967年に多摩美術大学に入学しました。その年に堀は仲間を募って「自己埋葬儀式」というパフォーマンスを銀座の路上で行い、美術家としての活動を開始しました。同じ時期に堀は演劇集団も主催して、演劇にも関わっていきました。さらに、60年代末の激動期にあって学生運動にも参加し、その中から美術の制度性を問い直す「美術家共闘会議(美共闘)」という運動体を立ち上げて、その議長としても活動しました。
1970年に学生運動の責任者として大学を除籍された堀ですが、2002年に出身である油画専攻に教授として招聘されました。以来13年間、「天職」と思えるくらいに教職に熱意を注ぎ込んできました。堀はそれまで教職の経験はありませんでしたが、かつての多摩美時代の師・斉藤義重から受けた薫陶が、堀の背中を押してくれたのかもしれません。本展はその退職記念展として企画されました。
堀が指導者として学生たちに強調したのはドローイングの重要性でした。それは堀自身が作品の展開の度に、集中的にドローイングを繰り返すことを弾機(バネ)としてきたという体験に裏打ちされたものでした。
本展では、60年代後半の堀の最初期の試行から始まり、各年代の様々なタイプのドローイングの試みを中心に展示しています。また70年代初頭の、堀の第一回と第二回の二つの個展を、今の視点で「読み直し」合体させたインスタレーション+パフォーマンスを、卒業生や学生とのコラボレーションによって実施します。
時代の証言ともなる資料展示も合わせ、堀浩哉が描き、作り、発信し続けた作品のそれぞれの「今」をあらわにし、その作家像に迫ります。