生涯自己と対峙し続け、一目見ただけで心を奪われるような魂の叫びをキャンバスに塗り込めた作家、鴨居玲。彼が57年(1985年9月7日兵庫県神戸市にて没)という早すぎる生涯を閉じて早30年が経ちます。見る者の心を掴んで離さない、彼独自の人間の心の底を見通す様な世界観と、強い個性を表現したパステルと油彩作品の展示を行うとともに、古来から日本にある伝統的なやきもの日本六古窯(にほんろっこよう)の展示を行う、『夏季展 没後30年 魂の作家 鴨居玲と日本六古窯』を開催致します。日本六古窯とは、日本古来の陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続く代表的な6つの窯、瀬戸、常滑、信楽、越前、丹波、備前の総称です。この度の展示は、この内の5つ、瀬戸焼、常滑焼信楽焼、越前焼、丹波焼を展示します。
信楽焼は、鎌倉時代中期に滋賀県甲賀市より始まったと言われています。種壺、茶器、徳利、火鉢、など大物から小物に至るまでの幅広い製品群があり、独特の土味のある「わび」「さび」を残しながら今日に至っています。備前焼は、平安末期~鎌倉初期にかけて岡山県備前市にてその特徴を整え、室町桃山時代の茶道の流行で一躍世に出ました。無釉焼きしめの、なんの飾り気もない素朴な味が特徴です。丹波焼は、兵庫県篠山市において平安時代末期から鎌倉時代初期に始まったと言われています。灰釉や鉄釉などによる、素朴で飾り気のないのが特徴です。瀬戸焼は、愛知県瀬戸市およびその付近で産する陶磁器の総称です。特に近世以後のものを瀬戸焼,鎌倉~室町時代の製品を俗に古瀬戸と称して区別しており、平安時代初期頃から無釉の杯や小皿などが焼かれ,後期には灰釉の壺類が作られました。六古窯の中で、唯一釉をかけて焼くという本格的な技法をとり、多彩な釉薬と染付作品が特徴です。常滑焼は、愛知県常滑市を中心に平安時代末期に始まりました。土味があり、土に含まれる鉄分を赤く発色させるのが特徴で、室町・安土桃山時代には茶器や花器が、江戸時代中期からは日常雑器が作られ、今日に続いています。
本展示会では、鴨居玲 絵画12点、近現代に活躍する陶芸家たちの六古窯作品、信楽焼8点、備前焼14点、丹波焼5点、瀬戸焼4点、常滑焼1点、を展示します。鴨居玲の絵画から受ける圧倒的なパワーとその世界観、存在感を、また、やきものでは1,000年以上前から褪せる事なく、根付いた土地それぞれの特色と、独特の風合いを併せ持った数々の作品を見比べ、各地の窯独自の良さをぜひお楽しみ下さい。