北澤美術館所蔵　ルネ・ラリックの香水瓶　アール・デコ ─ 香りと装いの美 ─

古代エジプトや古代ギリシアに源流をもつ香水は、長い間、限られた特権階級の賛沢品でした。しかし、20世紀の幕開けとともに、欧米の富裕層を中心に一般の人々にも香水が浸透し、その需要も急速に伸びてゆきます。多くの人々が競って香りを身にまとうようになると、香水の付加価値を高め、その魅力をアピールする戦略として、香水メーカーが美しいパッケージを施すことにしのぎを削るようになりました。 こうした時期に、すでにジュエリー・デザイナーとして名声を確立していたフランスのルネ・ラリック（1860-1945）は、香水商コティの要請を受けて1910年頃からガラスの香水瓶のデザインに取り組み始めます。香りの芸術の粋をヴィジュアル化したラリックの優美な香水瓶は瞬くまに大ブームを巻き起こしました。その後ラリックは、ガラスを素材としてアクセサリーやインテリアの分野でも多彩な活躍をみせ、アール・デコ・スタイルを代表するデザイナーとして確固たる地位を築きました。 本展覧会では、エミール・ガレの希少な代表作品などを有する世界的なガラス・コレクションで有名な北澤美術館の所蔵品からアール・デコの巨匠ラリックの生んだガラスの香水瓶やアクセサリー、化粧品容器を選りすぐり、あわせて神戸ファッション美術館のご協力により、同時代の欧米を席捲したアール・デコ・スタイルの装いを代表するドレスやファッション・プレートを加え約150点を紹介します。