展覧会担当の学芸員・赤木美智さんも「渓斎英泉の師、と知っていれば十分」と語るように、メジャーとは言えない菊川英山。没後150年を記念した本展では、前後期あわせて205点で英山の画業を振り返ります。
まずは第1章「肉筆画の世界」。艶やかな美人を丁寧に描いた英山の肉筆画。当時は評価が高く、諸侯に命じられて描いた作品もあります。
第2章「英山登場 ─ 歌麿を継ぐ絵師 ─」では、比較的早い時期の作品が紹介されます。
美人画の大家・喜多川歌麿が亡くなったのは、文化3(1806)年。大衆の要望に応え、英山もしばらくは歌麿風の美人画を描いていましたが、徐々に独自の作品も増えていきます。
第1章「肉筆画の世界」、第2章「英山登場 ─ 歌麿を継ぐ絵師 ─」第3章は「花開く英山美人 ─ 雅と俗のはざま ─」。文化年間の中期から、英山は独自の画風を確立させます。
北斎に倣った作品など試行錯誤の末にたどり着いたのが、6頭身の美女。それまでの長身美女と比べると、実際の人間に近いスタイルといえます。容貌も温和で、親しみやすさも特徴的です。
第3章「花開く英山美人 ─ 雅と俗のはざま ─」第4章は「花開く英山美人 ─ 青楼の女たち ─」。英山の美人画で、特に目を引くのが遊女を描いた作品。「青楼六玉川」は代表的な作品で、実在した高位の遊女を華麗に描きました。展覧会では前後期で3点ずつ展示されます。
第5章は「新たな女性像と次代へのかけはし」。英山の美人は時代が下ると、瞳の黒目が多くなり、背丈もやや低くなるなど、スタイルも変化。ただ、この時期は渓斎英泉や歌川国貞など、次代の絵師に人気が移っていきます。英山は文政末頃には、版画制作から手を引いています。
第4章「花開く英山美人 ─ 青楼の女たち ─」、第5章「新たな女性像と次代へのかけはし」本展には保存状態が良い日本浮世絵博物館(長野・松本市)の英山コレクションが23点も出品。退色しやすい青色が残っている作品が多く、英山の美しい美人画をさらに華やかに見せてくれます。
11月3日(金・祝)~26日(日)の前期と、12月1日(金)~20日(水)の後期で、全作品が展示替え。200円引きのリピーター割引も実施中です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年11月2日 ]■菊川英山 に関するツイート