須田国太郎は1891(明治24)年、京都生まれ。京都帝国大学で美学美術史を学んだ後に、関西美術院でデッサンを学びました。
美術史を研究しながら自らも絵を描いていたという、少し変わった経歴の持ち主です。
第1章「渡欧前」須田は1919(大正8)年に渡欧。マドリードに居を構え、プラド美術館での模写で研鑽を積む一方で、ヨーロッパ各地に出かけて美術研究も続けました。
帰国後も制作を進め、初めての個展を開いたのは1932(昭和7)年、実に41歳での初開催でした。
その後、独立美術協会の会員に推挙されて活動は本格化。「黒の画家」として知られる重厚な画風は、高い評価を得てきました。
第3章「第一回個展から大戦へ」本展の構成は「渡欧前」「渡欧、模写」「第一回個展から大戦へ」「山間風景」「動物と花の描かれた風景」「人里の風景」の六章。
初個展の出品作や独立美術協会展出品作など、主要作品約130点で須田の画業を振り返ります。
第5章「動物と花の描かれた風景」展覧会のメインビジュアルでも使われている《犬》は、須田の作品の中でもっともポピュラーな一枚です。
前に黒い犬、やや遠景に町並み、その後ろは森のような暗褐色。白く輝いている中景との対比で、犬の黒が美しく映えていると同時に、赤い目が強い印象を与えています。
展覧会では「動物と花の描かれた風景」、展示室3の中央部で展示されています。
スケッチ類晩年の須田は、京都市立美術大学(現:京都市立芸術大学)などで教鞭をとり、後進の指導にも尽力しました。
病床に伏せた後も、特製のイーゼルを使って寝ながらスケッチを続けていたという須田。1961(昭和36)年12月16日に70歳で死去、同日付で従四位勲三等瑞宝章が贈られています。
神奈川県立近代美術館 葉山は、2003年の開館。広々とした4つの展示室は天井高も高く、外に出ると海が見える好立地です。
地元の食材を使ったレストランと、オリジナルグッズを揃えたミュージアムショップは、入館料なしでも利用可能。地下には充実した美術図書室も備えています(取材:2012年4月11日)