展覧会の中核は、ミュシャの生まれ故郷であるチェコ・イヴァンチッツェ近郊の医師が所有するチマル・コレクション。ヨーロッパ国外に出るのもこれが初めてです。
展覧会では初期の素描から晩年のデザインまで、幅広くミュシャの足跡を紹介していきます。
まず1章は「旅の始まり」から。初期のミュシャは舞台装置の画家として働くほか、肖像画を描いて副収入を得ていました。写実的に仕上げられた作品も残されています。
冒頭続いて2章「パリのイラストレーター」と3章「演劇に魅せられて」です。
ミュシャが一躍脚光を浴びるようになったのは、大女優サラ・ベルナールの1895年正月公演用のポスター《ジスモンダ》(1894年)。その才能が認められ、ミュシャは5年契約でサラ・ベルナールの広告宣伝を担当するようになりました。
「椿姫」は、サラ・ベルナールにとって最も重要かつ有名な演目。ミュシャが手がけたこのポスターは、ミュシャの演劇ポスターの中でもっとも美しい作品とも言われています。
2章「パリのイラストレーター」、3章「演劇に魅せられて」演劇ポスターの最高傑作が《椿姫》なら、挿絵本の最高傑作とされているのが《主の祈り》。視覚化されたキリスト教の祈りの文への賛美を表したミュシャ自身による書で、モノクロームの素描からはその巧みな人物表現が見て取れます。
ミュシャによる挿絵の最高傑作《主の祈り》4章は「ポスターと版画 ─ ミュシャ様式」。本展のメインともいえる章で、会場で最多の作品が並びます。
成功して商業広告の仕事が増えたミュシャ。作品に登場する豊かな髪の渦は、アール・ヌーヴォーの象徴になりました。美しいそのスタイルは作家自身の名前をとって「ミュシャ様式」(ル・スティル・ミュシャ)と呼ばれ人々を魅了しました。
4章「ポスターと版画 ─ ミュシャ様式」展覧会最後は第5章「スラヴ民族の精神」と、第6章「国家と人類愛のために」。ミュシャはチェコ人としてのアイデンティティを強く持ち続け、愛国心に溢れた多数の作品を残しています。
最後にご紹介する油彩は《エリシュカ》。スラヴ女性の民族衣装を身に着けたミュシャの友人の娘を描いたもので、コレクション所有者であるチマル氏が最も高く評価している作品です。
第5章「スラヴ民族の精神」、第6章「国家と人類愛のために」世界的に人気が高いミュシャですが、日本ではさらに特別。東京では今年3~5月にも「ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り」が開催されて大いに話題を呼びました。本展も全国巡回展ですが、関東地方での公開は
そごう美術館のみ。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年10月30日 ]※
そごう美術館の後には
岡山シティミュージアム(2014年3月4日~3月30日)、
パラミタミュージアム(2014年4月4日~5月18日)に巡回します。