そごう美術館「絵画の潮流展 明治から昭和の日本画と洋画」
撮影・文 [エリアレポーター]
松田佳子 / 2017年3月13日
そごう美術館「絵画の潮流展 明治から昭和の日本画と洋画」会場入口
そごう横浜店6階にある「そごう美術館」で現在行われている「絵画の潮流展」。ここではエール蔵王・島川記念館秘蔵の名品を見ることができます。雪深い宮城県蔵王にある島川記念館は、現在冬季休業期間のため、横浜に多くの所蔵品がやってきました。
「明治から昭和の日本画と洋画」というサブタイトルにあるように、横山大観、速水御舟、片岡球子らの日本画家と高橋由一、岸田劉生、小磯良平らの洋画家の作品が一堂に会するという企画は、珍しいのではないでしょうか。
速水御舟《躑躅図》 1922年 絹本彩色
岸田劉生《麗子像》1919年 紙・水彩
絵画ファンの好みもそれぞれ日本画、洋画のどちらかに傾くのではないかと思いますが、同じ時代を生きた芸術家として、お互いに影響を受けないはずはありません。
会場を入ると正面に日本画の大家と言われる横山大観の『霊峰不二』と洋画の祖である高橋由一の『江ノ島図』の2作品が並びます。どちらも地元神奈川県民には郷愁を誘う風景です。
高橋由一《江ノ島図》1875年 キャンバス・油彩
横山大観《霊峰不二》 1939年 絹本彩色
その後会場は「日本画」と「洋画」に分かれ展示されています。
「日本画」では、上村松篁の『蓮池群鴦図』は高さ2mほどの2対の迫力ある作品で、大胆に描かれた蓮の花にオシドリやカワセミが愛らしく印象深い作品でした。また、速水御舟の5点の作品は細かく描き込まれた繊細な筆使いを間近に見ることができ楽しめます。
杉山寧の『曄』、加山又造の『白嶺』などは絵具の層を厚くした盛上技法により山の立体感を出していますが、これらは油絵の技法ととてもよく似た印象を受けます。
川端龍子の『夕凪』は荒くエネルギッシュな筆致は洋画と見まごうものでした。
「洋画」では、鴨井玲の老人の心の闇を映し出しているような『何處へ』や近年超写実主義として話題になっている森本草介の後れ毛1本にも妥協を許さぬような3点の作品などが印象的でした。
児島善三郎の『百合とポンポンダリア』や岡鹿之助の『遊蝶花』の図案化された花々は簡略化した日本画の趣を感じさせられるように思います。
伝統を継承し続けた日本画といちから西洋に学ぶことから始まった洋画。それぞれの画家たちは古きを得るだけではなく、新しい手法を模索し、独自の表現へと到達していきました。
日本画と洋画の表現は異なるものの、私たち日本人が持っている美意識の根底は同じものであるように感じることができた展覧会でした。
暖かくなったらエール蔵王島川記念館にも行ってみたくなりました。
最後に、平山郁夫『流沙浄土変』をじっくりとご覧になってみてください。私はこの絵の中に「三尊仏像」をみつけたのですが、いかがでしょうか。
エリアレポーターのご紹介
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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