まずは琳派の源流といえる本阿弥光悦と俵屋宗達から。会場入口の《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》も、絵を宗達が、書を光悦が手掛けた合作です。
本展では宗達の作品が5点(前後期あわせて)、伝宗達の作品が3点出展されています。「俵屋」を屋号とする絵屋を営んでいた宗達。琳派の立役者といえる存在ですが、その生涯は謎に満ちており、生没年さえ判明していません。
第一章「琳派の四季」から、俵屋宗達の作品会場入口から右側の壁面に並ぶのが、酒井抱一の作品。展覧会メインビジュアルの重要美術品《秋草鶉図》も抱一による作品で、モチーフ(本作ではススキ)越しに月をあしらうのは、抱一が得意としたスタイルです。
琳派の系譜として光悦・宗達、光琳・乾山に続くのが、抱一・其一。それぞれの間は約100年ずつ開いており、師弟関係ではなく私淑の関係で続いきました(抱一と其一は直接の師弟です)。
酒井抱一の作品実は琳派の定義付けは簡単ではありません。ただ、画中に「たらし込み」があれば、多くの場合は琳派を意識したと見られています。
最初の墨が乾かないうちに、濃度の異なる墨をのせる「たらし込み」(色が付いている場合もあります)。偶然にできる「にじみ」を活かすこの手法は宗達が得意とした事から、宗達を慕う後の画家たちにも広く使われるようになりました。
会場では速水御舟、菱田春草、小林古径らの「たらし込み」を紹介。画面上のアクセントになったり、柔らかさを与えたりと、使い方にはそれぞれの個性が感じられます。
第2章「琳派に学ぶ」から、たらし込み技法の数々展覧会後半には秋の情景を描いた作品が並びます。
渓谷を彩る燃えるような紅葉を大画面で現した奥田元宋、秋景色の山を行く人々を描いた川合玉堂や小茂田青樹、そして柿や栗、柘榴など、秋の実りをしっとりと描いた作品。美しい日本の秋は、装飾性豊かな琳派の作風と相性が良い画題です。
第3章「秋の彩り」琳派400年のメモリアルイヤーも、残すところあと3カ月。しっとりとした秋の風情を、お持ちの方はぜひ着物でお楽しみください(
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[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年8月31日 ]※会期は後期に入っているため、一部の作品は展示替えされています。ご注意ください。