
《「御旧領名所図巻」より「木崎の牧」》
江戸時代末期に盛岡藩北部にあった牧野「木崎の牧」に放し飼いにされていた馬を集めるという行事を描いた図です。木崎の牧は現在の青森県三沢市、おいらせ町、六戸町などの地域にまたがる藩営の牧の中で最大規模を誇りました。
馬は、盛岡藩の特産品の一つで、藩営の牧野で大切に育てられた後、将軍家や大名家へ献上されていました。たてがみや尻尾をなびかせ走る馬、それを裸馬に跨って両手を広げて駆け巡る勇ましい追手が描かれています。柵の外で見物する人々もおり、この行事は馬産地である盛岡藩ならではの風物詩でした。
担当者からのコメント
この図巻は、15代盛岡藩主 南部利剛が、安政3年(1856)に盛岡藩北部の海岸を視察した際、その巡見地の名所15ヶ所を描いたものの一場面です。藩主も実際に馬を追い込む様子を見分しています。視察に同行した盛岡藩士の一人は、この様子は勇壮で見る価値のあるもので、おもしろくて夢中になって見学したと日記に書き残しています。