
《日本の武士(武者絵)》 ジョルジュ・ルオー 1928年頃 墨、パステル、精油で溶いた油彩 パナソニック汐留美術館 © ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 E6234
20世紀を代表するフランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871–1958)。《日本の武士(武者絵)》は、日本の錦絵を写した作品で、軍馬の躍動感と武士の気迫に満ちた表情を、素早いタッチと黒の巧みな線で見事にとらえています。ルオーが、自身の絵を収集していた日本人コレクター福島繁太郎のパリの家を1929年に訪問した際に持参した作品と考えられています。
本作では、日本の水墨画のような自由闊達で力強い線で、対象を的確にとらえて安定した構図をつくり、一方で色彩においては、周囲を暗く抑えつつ、主題である武士と馬を、鮮やかな色を纏わせながら白地を活かして明るく仕上げています。素描家であり色彩家であるルオーの才能のほとばしりをみせる作品であり、また、彼の日本美術に寄せた関心を示す貴重な作品です。
2020年に、ルオーと日本との知られざるつながりに焦点を当てた「ルオーと日本展 響き合う芸術と魂 ― 交流の百年」を開催。本展は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けわずか17日間しか開館できませんでしたが、《日本の武士(武者絵)》は、本展のテーマを象徴する作品として図録の表紙を飾りました。その後、2024年に当館のコレクションに加わりました。
担当者からのコメント
ルオーが《日本の武士(武者絵)》を描いていることに、驚きや興味を感じる方も多いのではないでしょうか。甲冑の緑色と手綱の褐色の配色が調和し、力強さと品格を感じます。ルオーが実際にどのような武者絵に触れ、どのようなイメージを抱いていたのかを想像させる、魅力的な作品です。