Paintingness

本展は、透明なアクリルボックスに日常的な物質や断片を封入。その表面に中身を写した写真を貼り、さらにその写真を削る、擦るという操作を施した作品群によって構成されている。 写真と実物が同一空間に配置されながらも、表面に作者の身体性、削れ方の偶然性が介入することで、像と実体、記録と現実、表層と内部のあいだに揺らぎを生み出す。 一見すると芸術という重たい歴史を背負う「絵画」のような存在感を放つこれらの作品は、実際にはコンビニエンスストアで印刷された写真と日常に転がる物体にすぎない。その一見と実在のコントラストは「絵画的であること（paintingness）」そのものを問う。 長い月日をかけて輪郭づけられてきた“アートらしさ”や“高尚さ”。それらが無価値な物質や白い壁の上でせめぎ合い、表層が剥がれかける瞬間に、私たちは本当に何を見ているのか。 “Paintingness”という造語をタイトルに据えるこの展示は、絵画らしさやアートらしさといった“それっぽさ”の皮膜をなぞりながら、その背後にある知覚、構造、欲望の在り処を、皮肉と敬意を持って可視化しようとする姿勢を起点にする。