古都・奈良に秋の深まりを知らせる正倉院展が、今年、77回目の開催を迎えます。
正倉院宝物は、 校あぜ倉くら造づくりで知られる正倉院正倉におよそ1300年ものときをこえて守り伝えられてきた宝物群です。奈良時代に日本を治めた聖しょう武む天てん皇のうのご遺愛品をはじめ、平城京を舞台に花開いた天平文化の粋すいを伝える貴重な品々で構成されており、その数はおよそ9000件にものぼります。天皇の勅ちょく封ふうという厳重な管理体制のもと、まとまったかたちで今日まで守り伝えられた稀け有うの宝物群であり、世界的にも極めて高い価値を誇っています。
今年の正倉院展でも選りすぐりの宝物が会場を彩り、私たちを天平の華やぎの世界へと誘いざないます。聖武天皇の身近におかれた「木もく画が紫し檀たんの双すご六ろく局きょく」(北倉37)、「鳥とり毛げ篆てん書しょの屏びょう風ぶ」(北倉44)といった宝物は、高貴な素材と技が駆使された最高級の調度品で、華やかで知的な雰囲気にあふれた宮廷生活を偲ばせます。
一方、ほとけへの捧げものを収めた「黒くろ柿がき蘇す芳おう染ぞめ金きん銀ぎん山さん水すい絵えの箱はこ」(中倉156)など、技巧を凝らした祈りの宝物を通じて、仏教をよりどころとした当時の人々の心にも近づくことができるでしょう。
また、豊麗な花文様を表した「花か氈せん」(北倉150)、深い紺色がなんとも美しい「瑠る璃りの坏つき」(中倉70)、名香「蘭らん著じゃ待たい」として世に知られる「黄おう熟じゅく香こう」(中倉135)など異国情緒あふれる品々から、シルクロードを通じた当時の国際色ゆたかな都の情景が垣間見えます。
宮内庁正倉院事務所による最新の宝物調査の成果も織り交ぜながら、豪華なラインナップで開催する今年の正倉院展を、ぜひともご堪能ください。
(公式サイトより)