そのような状況以前の、1968年7月15日から8月31日にかけて、関西を中心に活動していた新進の彫刻家たちにより、香川県小豆島の石切場で日本青年彫刻家シンポジウムが開催された。このシンポジウムが契機となり山口牧生(1927~2001)、増田正和(1931~1991)、小林陸一郎(1938~)の3人による造形集団環境造形Qが誕生する。
この環境造形Qが試みようとしたのは、3人の彫刻家が平等な立場で共同制作をすることが可能かどうかという試みであった。また共同制作では、野外の公共空間に置かれるモニュメントはいかにあるべきかを考え、それを実践してみることであった。更に環境造形Qの3人が共同制作で志向したものは、芸術性にこだわらない没個性的なモニュメントであった。そんな思いを≪開かれた≫モニュメントという文章に寄せている。
「1968年に環境造形Qを結成して以来、わたしたちは一貫して<開かれた>性質をもつモニュメントをめざしてきました。それは台座の上にことごとく据えられたり、いかにも芸術でございますといった作品ではなく、みずからのなかにひとびとを受け入れ、ひとびとの参加を待ってはじめて息づくような作品であり、さらにあたりの自然、太陽や地形、樹々や鳥、雨や風ともひびき合い語り合うものであってほしいとねがいました。(攻略)」
本展は、1968年の環境造形Qの結成から1988年の解散に至るまでの3人による共同制作の検証を行うことで改めて日本におけるパブリックアートについて考察するものです。
そして今回は、環境造形Qの一員でもある小林陸一郎の新・近作の作品展示も同時開催いたします。
彫刻家・小林陸一郎は、近年の≪旅人の碑≫シリーズについて「不思議に出会って人は感動します。感動を立体として表現すれば彫刻になります。人生という旅の中で出会った感動を≪旅人の碑≫として造形化しました」と語っている。近年小林は、トルコのイスタンブールにあるミマールシナン大学での客員教授の傍らトルコ国内の3ヵ所で大理石による石彫シンポジウムに参加するなど精力的に創作活動をつづけている。
彫刻家・旅人の小林の作品の一つひとつに作家の人柄が窺え、私たちを時の移ろいや悠久の時に誘ってくれます。長年の環境造形Qのひとりとしての仕事と作家個人の軌跡を、「旅人の碑」シリーズの作品を中心にしながらご紹介いたします。