明治40(1907)年に官設の文部省美術展覧会が開催されてから、今年で100年になります。この展覧会はその後帝国美術院展、新文部省美術展と改称されました。今日の日展の源流です。京都市では明治43年、第4回文展以降、京都市陳列会として開催されました。昭和8(1933)年11月13日に、大礼記念京都美術館が開館しますが、これが今日の京都市美術館の始まりで、その最初の展覧会は、第14回帝国美術院展京都陳列会でした。翌9年には大礼記念京都美術館美術展覧会を開催し、同時代の美術の拠点となりました。この大礼記念京都美術館は、帝展などの特別展の会場となるほか、同時代の美術作品の常設陳列の役割も担っていました。「美術館陳列品ハ購入並ニ寄付・寄託ニヨル」という「本館経営方針」をがあり、当初から美術館機能の本義である「常設陳列」を目指していたことがうかがえます。
こうした経緯から現在の京都市美術館には、文展・帝展・新文展に入選した名品が広く収録さされています。これらの名品のなかから、本展覧会では日本画の作品を鑑賞していただきます。京都という地で育まれた私塾や美術学校制度の問題、美術学校という教育機関と師弟関係からなる画塾の問題、官展制度と京都画壇の関連などを歴史的な作品から迫ってみます。京都画壇と称される人たちが、国家の色濃い美術展の中で、これに組せず競い合い、自己の表現としてのアイデンティティと向き合ったかを、官展という中央の文化政策の視点からでなく、京都という磁場から捉え直していただけたらと思います。
従来の「官展」という中央からの視点ではみえてこない、京都画壇の栄光と研鑽、自負と反旗を当時の展覧会出品作品でお楽しみください。歴史に潜む美術の息遣いが感じられることでしょう。竹内栖鳳をはじめ、秋野不矩、池田遙邨、上村松園、小野竹喬、梶原緋佐子、北沢映月、菊池契月、土田麦僊、徳岡神泉、中村大三郎、西山翠嶂、平井楳仙、福田平八郎、山口華楊ら京都画壇一同の約120点の作品を次の6章で展覧しています。
■1章 博覧会と京都画壇
■2章 文部省美術展と京都画壇
■3章 帝国美術院展と京都画壇
■4章 大礼記念京都美術館美術展覧会と市展
■5章 改組帝展/昭和11年文展と京都画壇
■6章 新文展/戦時文展と京都画壇