周南市制5周年記念　尾崎正章展

　尾崎正章はふるさとの風景を描き続けました。中でも海景を描いたものには、白い色彩を使い、縦長い切り取った画面に俯瞰的な構図で描いた叙情あふれる作品が数多くあり、見る人に静けさと無限の広がりを感じさせてくれます。さらにそこに登場するのは、尾崎が長年親しんできた生活の一こま、そして人びとでした。 　明治45年（1912）、尾崎正章は周南市福川の医者の家に生まれました。幼い頃から近くの浜辺を遊び場とし、徳山中学へ進学してからは、入学祝いに買ってもらった伝馬船で徳山湾内を釣りに出かけたりしていました。 　尾崎と絵画との出会いは中学時代です。胸部を患い一年半にわたる療養生活を送っていた時に絵を描くことを勧められたのがきっかけでした。周東中学（現柳井学園）へ復学、卒業後は医者を目指して上京したものの、自分には向いていないと日大の文科で学びました。しかし昭和12年（1937）に病が再発し京都へ転居、この地で暮らしているときに大谷大学教授の新村秀一に出会い、その勧めによって本格的に絵を描き始めました。 　戦後間もない昭和21年（1946）、尾崎は新村出（新村秀一の父、広辞苑の編者）の紹介により安井曾太郎に師事します。その一方で同年に結成された防長美術家連盟に加わり、天野芳彦、河上大二、前田麦ニ、松田正平らと交流しながら絵画の制作を続けました。以後一水会展、日展を主な発表の場とし作品を制作していきました。静物、人物、山、海、港、対象は様々に変化しましたが、一人の絵かきとして、ふるさとを描き続ける姿勢に変わりはありませんでした。そして平成13年（2001）、尾崎正章は89歳の生涯を閉じたのです。